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ストレンジ・デイズ



「で、一体それはなんなんだ…」

俺はの視線の先には、怜悧が持ってきたメイク道具一式とロングヘアーのカツラ。

「私、考えたの。どうやってトミーに復讐するかって。で、でた答えがコレ」

怜悧はビシッと人差し指を突き上げる。

「名付けて、『目には目を、歯には歯を 』大作戦!」

………………。

「意味が、よくわからないんだが」

俺が控えめに尋ねると、怜悧は愛くるしい顔を拗ねたように膨らました。

「つまりトミーにも同じ思いをさせてやればいいってこと」

俺の脳内は依然ハテナマークだ。

「作戦の内容はこう! まずトミーを誘惑して惚れさせる! そしてトミーが告白してきたところで、ズッタズタにふってやるのよ! 簡単でしょ?」

「………あぁ」

それはいいアイディアだと思うが。

「誰が奴を誘惑するんだ? トミーは怜悧のような可愛い女の子になびかない危篤な男子なんだぞ?」

「仕掛人はもう決めてあるわ」

「え、だれ?」

この世に怜悧をしのぐ女子などいないはず。俺が好奇心から尋ねると妹はにーっこり笑ってこう言った。

「お兄ちゃん、私のためにトミーを誘惑してくれない?」

…………………………………………ん?

「いやいやいやいや!! それはおかしいだろ! 俺は男だから! トミー誘惑できないから!!! え…なに、もしかしてトミーってそういう趣味指向だったのか?」

だとすれば怜悧をふったことも理解できるが。

「そうじゃなくて、お兄ちゃんには女装してもらうの。で、そのままトミーの高校に入学すれば完璧♪」

「今ものすごいことサラリと言ったな」

いったい何を考えてるんだ。男が化粧したってキモいだけだろうに。

「なに、女装? そんなアホな。いくら怜悧の頼みでも女装なんか出来ないって」

ためしにカツラかぶってスカート履く自分の姿を想像してみた。
………ぅおぇ。

「無理無理無理。第一俺もう高校決まってるし」

たしかトミーが通ってるのは全国的に有名な全寮制超進学校、私立最神(モガミ)学園だ。そんな高校に俺が入学できるはずがない。

急に冷めた俺を見て怜悧の機嫌が目に見えて悪くなってしまった。俺が怜悧に逆らうなんてめったにないから苛立ちを感じているのだろう。そんな顔も可愛らしいけど。

「怜悧、ホントにごめんな、力になってあげられなくて。でも大丈夫、お兄ちゃんが別の復讐方法考えてやるから」

俺は優しく妹の肩に手をのせた。

「そうだ、ひびきに頼むってのはどうだ? アイツなら色々つてがありそうだろ?」

俺の提案に怜悧はゆっくり首を振った。

「やだ」

「や、やだって……」

可愛いなオイ。

「お兄ちゃん!」

「な、なんだ?」

突然妹につかみかかられ、俺は一瞬バランスを崩しそうになる。怜悧の瞳はキラキラと輝いていた。

「一回だけ、お兄ちゃんに化粧させて!」

え。

「いゃあ…、それはちょっと……」

「お願いお願いお願ーい!!」

ああ妹よ、君にそんな潤んだ瞳で見つめられたら……。

彼女のあまりの可愛らしさと必死さに、俺は思わず首を縦に振り、気づけば妹の好きなようにさせてしまっていた。


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