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ストレンジ・デイズ



教室に入った時から、俺は明らかに浮いていた。可愛い系男子からの憎悪すら感じる鋭い視線。その他生徒の好奇の目。元々なかった俺のテンションはさらに急降下した。

「激しく帰りてぇ…」

席についてうなだれる俺を見て、唄子が凛々しい顔つきになる。

「ちょっとキョウちゃん、みんなと仲良くなる努力しなきゃダメよ! また同じクラスの人からはラブレターもらってないんだから」

「いいよ、別に」

つかラブレターって、今時それどうよ。あんまり女がいないもんだから、ここの連中はセオリーパターンしかしらないのか?

「あの…」

俺のイライラが頂点に達し、股を広げ貧乏揺すりをしていた時、か細く弱々しい声が聞こえ、俺は顔を上げた。

「お前…」

目の前にいたのは昨日イジメのターゲットにされていた、ナントカっつう男。その風貌はとても日本男児とは思えないほど華奢で、おどおどしていた。

「小宮さん、あの…昨日は、ありがとう」

本当に礼言うつもりあんのかってぐらい、そいつの声は小さかった。ただでさえ機嫌が悪かった俺はそのしゃべり方にさらにイライラしてしまう。

「僕、あの、小宮さんに…お礼、言わなきゃと思って」

うつむきながらぼそぼそとしゃべるイジメられっ子の口調に俺はマジギレ寸前だったが、そんなこと怒鳴ったってしょうがない。俺は深呼吸していったん気を静めてから、ゆっくりと立ち上がった。

「コヤマウチ、とかいったか」

「オサナイだってば」

唄子の鋭い横槍か入る。クソ、名前なんかどうだっていいじゃねえか。

「1つ言わせてもらう。昨日俺がしたことは全然お前のためなんかじゃないし、俺はイジメに反対! とかいう善人でもない。俺は、自分のために動いただけだ。それを忘れんな」

「う、うん」

素直に返事する小山内を見て、コイツ本当にわかってんのかと疑いたくなった。

「だいたい、お前自分の意見をちゃんと言わないから悪いんだろーが。はっきり言わせてもらうが、俺はお前みたいな奴が一番嫌いなんだ。うじうじうじうじしやがって。見てるだけでイラつくっつーの!」

俺の罵倒に何も言い返せないままうつむく小山内。その姿を視界に入れたくない。そう思った瞬間、俺はすでに動いていた。

「ちょっキョウちゃん、どこ行くの!」

クラスメートのウザい視線も、小山内のたどたどしい態度も気に入らない。俺がこんな調子でまともに授業が受けられるはずがない。俺は唄子の静止も無視して教室から早足で出ていった。












「キョウちゃん、キョウちゃんってば!」

ずかずかと廊下を歩いていた俺の背後から、足音と共に唄子の声が聞こえた。

「なんだよ、うるせえな」

俺が振り返ると唄子は服の裾をつかみ、逃げられないぞとばかりに俺を睨む。

「キョウちゃん、何もあんな言い方しなくてもいいじゃない」

「あんな言い方って?」

「小山内君によ! 彼はただお礼を言いに来ただけなのに」

唄子の険相に、そんなことで怒ってんのかよ、と俺はこれ見よがしにため息をついた。

「あのなあ、ハッキリ言わなきゃアイツは、次も俺に助けてもらえると思い込んで自分で何とかしようとしなくなるだろ。それじゃなんの解決にもならねえ」

「でも、あそこまでキツく─」

「うるさい! お前にあれやこれや言われる筋合いはない。俺はあんなお荷物抱える気ねえんだよ。すでにクラスメートの何人かに恨まれてるってのに」

俺の言葉に唄子はびっくりしたような信じられないような顔になった。

「キョウちゃんってさあ…」

「なんだよ」

しげしげと俺の顔を見てくる唄子。かなり居心地が悪い。

「もしかして、友達いなかった?」

「なっ…」

いきなり的を射たことを言われ俺はムカつくと同時に動揺した。唄子は失礼な発言にもかかわらず特に気にもしない様子で腕を組んだ。

「いやぁ…思っててもなかなか言えないこというなあ、と。そんなズバズバはっきり言って、嫌われなかった?」

「うるせー嫌味か! お前だって嫌われてただろ」

俺が嫌がられてたっていうなら、こんな自己中な女が好かれていたはずがない。けれど唄子は俺の剣幕にも動じず、ちょっとえらそうにふんぞり返った。

「一緒にしないでよ。あたしは隠してる人には隠してたもん」

「……何の話?」


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