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ストレンジ・デイズ



その後の話。突然現れた小宮今日子がすぐに消えてしまったことは色んな奴を阿鼻叫喚に落としたらしい。柊、鬼頭、荒木の荒れようは凄まじく、俺の大捜索が始まったらしいがその頃俺は自分の部屋に戻ってくつろいでいた。ぶっ倒れた戸田は病院に一度は運ばれたものの異常はなく退院したそうだ。しかし戸田が小宮今日子のことばかり話すので、トミーが心配して気を付けるようにわざわざ電話してきてくれた。

後日、戸田は善に他に好きな人ができたと頭を下げにきたので、なんだかまるで善がフラれているみたいだった。そして戸田から解放された善は俺の作戦がお気にめさなかったようで、俺が小宮今日子だと先輩にバレてしまうことを心配していた。

しかし、バレるわけねーじゃんと笑ってから二週間後、ずっと学校を休んでいた戸田は執念のストーカー行為で本当に俺と小宮今日子を結びつけてしまった。今は積極的に隠していないとはいえ、自力で小宮今日子の正体にたどり着いたのだ。ここにいるどんな奴よりも戸田は優秀だった。いや、執念深いと言った方が正しいのか。
しかし俺の本当の顔を見た戸田はしょんぼりして、ごめんなさいと頭を下げてきた。性別が男なのは問題なくても、美形でなかったのは問題だったらしい。こうして戸田のストーカー生活は終わり、トミーと夏川は「面食いで良かった!」と二人して安堵していた。

一度ごめんなさいしてしまった以上善の方に戻ることもなく、戸田は正常の状態に戻った。再び真面目に学校に通い生徒会を支えている。



「そっか、良かった」

とある日の放課後、俺と善は校舎裏の誰にも邪魔されない場所で話していた。事の顛末を善に話すとあからさまにほっとしていた。

「じゃあこれで万事解決だな」

「まあそうだけど、あれから小宮今日子の連絡先おしえろってやつがまた増えて……もう海外行ったっつってんのにうるせぇのなんの」

小宮今日子がせっかく現れたのにすぐに消えてしまったことで今日子ファンが暴れていた。とばっちりがイトコ設定の俺にふりかかっているのだ。

「……お前何笑ってんの?」

何故か俺を見て微笑んでいる善にいらっとして睨み付けてしまう。善はふとした瞬間に俺を見て笑っていることがしょっちゅうある。

「いや……キョウがいるなと思って」

「いるけど。だから?」

「もう勝手にいなくなったりするなよ」

「わかってる」

「キョウが側にいてくれて嬉しい。ずっと離れたくない」

「なっ、や、やめろって」

善に指に触れられて焦る。学校の有象無象に何を言われても何とも思わないのに善にこんなことされると照れてしまう。男の姿を見ても態度が変わらないどころかむしろずっと距離が近くなった善はおかしな奴だ。

「お前、俺をからかってるだろっ」

「そんなわけない。本気だってわかってるくせに」

「う……」

善の目にまっすぐ見つめられると抵抗できない。たとえ背中に手を回されても逃げることはできなかった。

「って何やってんだお前!?」

「友情のハグ的な」

「いやなんでそんなの今やるの?」

「どこまでオッケーなのかなと」

「はあ!?」

怒鳴ってはいるものの逃げようとしない俺を善は離してくれなかった。こんな姿を誰かに見られたらどうするつもりなのか。一人焦っている俺の背後から俺の名前を呼ぶ声がした。

「何してるんですか」

その声に覚えがありすぎて咄嗟に善を突き飛ばして振り返る。そこには頭に包帯を巻いた香月の姿があった。

「その頭どうした!?」

「俺の頭なんてどうでもいいんですよ。何をくっついてるんですか、二人とも」

長らく長期出張でこの学校を不在にしていた香月は、その綺麗な顔をひきつらせて俺と善を睨み付けていた。


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