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ストレンジ・デイズ
□小宮今日子


善と対戦相手の筑波という生徒が出ていき、体育館が喝采に包まれる。善の女子の制服、という王道に対して筑波はチャイナ服という攻めた格好だ。

「S組の奴、意外と可愛いな。女子か?」

「いやS組はスポーツ推薦組だから男しかいないわよ」

しかしこの場所から見ると女子にしか見えない。善より背も低くて華奢だし、これは善の人気パワーがないと勝つのは難しいかもしれない。

「これは、初っぱなから中々ハイレベルな闘いになりそうですね。それではまず、先攻のS組筑波くんから五分間のアピールタイムをお願いします」

「はい!」

手を上げて声高々に返事をした筑波はそのまま舞台の真ん中まで出ていきバク転した。

「な、何だ!?」

「しまった! 筑波くんは体操部だった!」

その後も側転したり体の柔らかさをアピールする筑波。観客も盛り上がり、チャイナ服のせいで足もよく見える。

「脛毛も全然ない……顔も可愛い……」

筑波の美脚アピールに善までもが拍手している。片手にサッカーボールを持っている善の姿に不安しかない。筑波の番が終わると、善が前に出てきた。

「では続いて一年A組、八十島くんです!」

「はい!」

返事はとてもいい。しかしこのままでは善では勝てないかもしれない。善が一歩前に出ると同時に、俺は舞台に飛び出した。

「ちょっと待ったぁぁあ」

会場全員の視線が俺に向けられる。誰よりも近くにいた善が俺の姿を見て叫んだ。

「キ、キ、キョウ!? 何だその格好!」

俺は唄子が用意したカツラとセーラー服を着て、小宮今日子の姿をしていた。善だけでなく夏川とトミーも顎が外れそうなくらい口を開けて驚いている。

「一年A組の美少女といえば俺だろうが。なに勝手にお前が出てんだよ」

「え? ええ?」

善は混乱してまともにしゃべれなくなっていた。俺が再び女装してこの場に出てくるとは夢にも思っていなかったのだろう。

「おーっとこれはすごい展開になってきた! 転校したはずの美少女、小宮今日子が帰ってきた!」

「司会者、選手交代だ。一年A組代表はこのサッカー小僧じゃなくて、この俺小宮今日子がやる」

おおーっと会場が盛り上がる。審査員席にいた柊は「お姉様ぁぁぁあ」と雄叫びをあげて泣いていたし、荒木と遊貴先輩は口を半開きにしたまま硬直している。客席最前列では鬼頭が俺の名前を呼びながら跳び跳ねていた。

「ちょっと待て、百歩譲って選手交代はありだとしてもそいつはもうこの学校の生徒ですらないんだろ? それをA組代表ってのはさすがにルール違反だ!」

S組の筑波が負けを心配して抗議してくる。確かに筑波のいうことにも一理あるかと司会者が困っていたので、俺は善からマイクを奪った。

「俺は今日、この後正式に学校を辞めるための手続きをしに来たので正確にはまだここの生徒です! なのでA組代表として出場しても何の問題もありません!」

ここは完全に嘘八百だ。俺はもうとっくにこの学校の生徒ではない。しかしもう一度女装してミスコンに出たいと唄子に頼み、二人でこの日のために準備してきたのだ。言い訳は唄子が考えた。

「なるほど、ならば異例の事態ではありますが、小宮今日子さんの出場を認めましょう! それでは一年A組のアピールタイムです」

「アピールタイム?」

司会者の言葉に鼻で笑ってしまう。俺は客席と審査員席に向かって声高らかに宣言した。

「そんなものは必要ねぇ。俺が出場するなら優勝確実、残りはすべて消化試合。審査員ども、黙って俺に投票しろ!」



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