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ストレンジ・デイズ



「善?」

目の前の男の目が潤んでいるのに気づいて、泣いているのかと驚いた。惣菜の入ったタッパーを落としそうになり、慌てて靴箱の上に避難させる。

「ど、どうした? 俺、何かまずいこと言った?」

「違う、ごめん。真宮くんは悪くない。俺が……」

「?」

「……俺、キョウのことが好きだったんだ」

「えっ」

善の衝撃的な告白に頭が真っ白になる。善は涙をぬぐって少しずつ話してくれた。

「でも学業と部活の両立で忙しいからって理由つけて、告白しなかった。そうしたらあの事件が起こって、キョウは二度と戻ってこなかった。電話しても繋がらないし、海外に行ったって人づてに聞いただけで……あの日からずっとつらかった」

「善……」

善の告白は、俺にとって脳天を叩き割られたような衝撃だった。善が俺のことをそんな風に思ってくれていたなんて知らなかった。善が寂しそうにしているのには気づいていたが、そこまでつらい思いをさせていたなんて。

「真宮くん、キョウに声がそっくりだったから一緒にいるとキョウのこと思い出して苦しくて。だから意図的に避けるみたいになっちゃってて……真宮くん?」

気づいたら俺は泣いていた。仲良くしていた相手が突然転校して、音信不通になったらショックを受けるに決まっている。俺は善の気持ちをまったく考えられていなかった。俺はこれからも善に会えるから寂しいなんて思わなかったが、善はそうじゃない。

「俺が悪かった。善の気持ちに気づかないで何も言わず転校なんかして、本当にごめん」

まさか俺のしたことが善を苦しめていたなんて。また善と友達になりたいなんてのんきに考えていた自分が恥ずかしい。だらだらと涙を流す俺を見て、善が唖然としながら口を開いた。

「真宮くんって、キョウなのか?」

「あっ」

完全に自分からバラしていた事にいま気づいた。何も言えないでいると、善が俺を思い切り抱き締めてきた。

「ぜぜぜ善!?」

「キョウ! 会いたかった……」

強く抱き締められてまったく動けない。「いや違うんだよ」とかごにょごにょ言い訳したがまったく聞き入れてもらえず、1分くらいそのままでいると善がゆっくり解放してくれた。

「ごめん、俺嬉しくて」

「いいけど……嬉しさとかよりキョウが男だったことの衝撃とかないのか」

「また会えたんだから何でも良い」

めちゃくちゃ満面の笑みでそう言われてしまい罪悪感で胸がつぶれそうになった。俺は観念して、女装してた経緯をかいつまんで善に話した。

「ってわけで、唄子に協力して貰ってまたここに入り直したんだよ。いつまでも女装してるわけにはいかなかったし」

「そういや、キョウが前に男装してた時の面影ちょっとあるな」

確か善には今日子男装バージョンを見られていた。あれはメイクしていたから今とは違う顔をしていたが。

「本当に騙すつもりとかはまったくなかったんだよ。女装は変装のつもりだったし。それがあまりにも美少女すぎて色んな男の人生狂わせちまったけど……善も今日子の素顔がこんな地味な男でびっくりしたろ」

好きになった女が実は男だったなんてトラウマになってもおかしくない。しかし善はまったく怒ってない様子で俺の手を握ってきた。


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