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ストレンジ・デイズ
□学園生活の始まり


「う、嘘だろ…」

登校初日、理由をつけてサボった日の翌日、俺は朝っぱらから未知の読み物を黙読していた。唄子から読めと強制された、例の趣味の集大成だ。

「あ〜、キョウちゃんおはよう」

寝癖の激しい唄子が寝ぼけ眼のまま二段ベッドからおりてくる。

「おはようじゃねえよ、一体なんなんだコレは」

「コレって?」

「お前が昨日読めって言ってきた漫画やら本やらだよ! こんな…こんな訳のわからんもん読ませやがって!」

ちょっと軽い気持ちで読み始めた俺には重い衝撃だった。唄子がBLと呼ぶそのブツは、俺の想像をはるかにこえていたのだ。

「男と男が…あんなことやそんなことを…」

俺は男同士の恋愛といっても、男と男が性別というハンデを乗り越えながらも愛し合っていく、純粋なラブストーリーだと思っていた。それなのにコイツらときたら、男同士の葛藤なんて無視してすぐベッドシーンに入りやがる。男女間でもこんなすんなりいかないだろうに。

「絶対おかしいだろコレ! どこのエロ本だっつの。いやエロ本の方がまだ健全だ!」

「何言ってんのキョウちゃん。何だかんだ言ってもう3冊目じゃない」

「いや、これは…」

別にBLにはまった訳じゃない。知らない世界に対する好奇心とでもいうか、恐い物ほど見たくなる、っていう心理だ。

「とにかく! お前が俺にこんなこと期待してるなら、絶対絶対嫌だからな! だいたい何だよ、ここに出てくる生徒会長は。犯罪者ばっかじゃねえか」

俺が、時に寒気を感じ時にあまりのありえなさに笑った漫画本を机に叩きつけると、パジャマ姿の唄子はむっとした顔で俺を見下ろした。

「あたしはキョウちゃんに警告してあげてるのよ。こんなことにならないように、注意してるんじゃない」

「嘘つけ、望んでるくせに」

唄子の言うことなんて信じられない。俺はこいつに振り回されることなく、絶対今まで通り自由気ままに生きてやる。

「こんな本があるせいでお前が変なことたくらむんだ。だいたいありえねえだろ。男の生徒会長に襲われるなんざ…」

俺は興味本位で目を通した漫画本を、元のダンボールになおした。

「これは没収。クローゼットの奥に突っ込んでやる」

「ちょっと、何を勝手に…」

俺はなんとか唄子の静止を振り切ったが、ダンボールの中に漫画や本とは違うものを見つけ、箱をかつごうとしていた俺の手は止まってしまった。

「なんだこれ?」

中にあったのは写真をはさむアルバムだった。かなり分厚い上、高級感がある。

「それはあたしの生きる糧なんだからね! 早く返し……ってだめだめだめ! これは駄目!」

俺がアルバムを箱から出すと、唄子はものすごい早さでそれをひったくった。どうやら大事なBL本のことを忘れてしまうほどのものらしい。

「なんなんだよ、それ」

「なんでもないわよ」

アルバムを後ろに隠し、壁際まで下がる唄子。かなり怪しい。

「なんでもないんだったら見せろよ」

「キョウちゃんには関係ないもん」

唄子はこれ以上近づいてくるなとばかりに、俺を睨みつけてくる。もしかしてこのアルバムには、コイツの弱点が隠されてるんじゃないだろうか。そんな願望にも近い予感が俺の中に浮かび上がる。

「隠されると見たくなるだろ! 何の写真だよそれ」

「だから何でもないって…あああ!」

突然、唄子が部屋の時計を指差し叫んだので、俺の体は驚きでビクッとはねた。

「たいへんキョウちゃん、遅刻よ!」

「…は? まだ時間あるだろ」

俺も時計を確認したが、時間にはかなりの余裕がある。けれど唄子はまったく聞く耳を持たなかった。

「ほらほら早く! あたし着替えるんだから出てって!」

「ええ?」

唄子は俺の腕をむんずとつかみ脱衣場まで引きずっていく。あまりの力に俺は彼女に従うしかなかった。


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