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ストレンジ・デイズ
□八十島善


その日の夜、俺は手料理を持ちながら善の部屋の前にいた。色々考えたがやっぱりおかず作りすぎちゃったからお裾分け作戦しかない。俺がドアをノックすると扉を開いた善が驚いて後ずさった。

「えっ、何!? 真宮くん?」

「これ、作りすぎたから食ってくれ」

「ええ? いきなりどうしたの?!」

今日子の時には毎日のようにしていたことだが、男になってからは始めてだ。善はいつも笑顔でもらってくれていたが、今は困惑顔だ。

「せっかくだけど、気持ちだけ貰うことにするよ」

「な、何でだよ。味は保証する!」

「いや、こんなこと真宮くんにしてもらう理由はないし、それに今日は食堂で食べる約束してるから」

「誰とだよ!」

「誰って……戸田先輩だけど」

「戸田!? 何でアイツと!?」

「何でって言われても…」

俺が詰め寄って善の部屋の中に入る。後ろの扉が閉じる音がした。

「駄目だって、アイツはお前のストーカーなんだから」

「ストーカー? ま、真宮くんのことじゃなくて?」

「何で俺だよ!」

「だって仲良くもないのにいきなり差し入れしてくるし……」

仲良くもない、と言われて多大なショックを受ける。仲良くしてくれないのは善の方じゃないか。

「俺は今日子からお前のこと頼まれてたんだよ。自分の代わりに夕食作ってやってくれって」

「キョウが?」

警戒心丸出しだった善が今日子の名前を出した途端軟化する。俺達は間違いなく親友だった。善もそう思ってくれてるはずだ。

「ありがとう。でも、俺は大丈夫だ。気にしないでくれ」

「気にすんなって言われても……お前が仲良くしてる戸田って男は厄介なんだよ。前にあいつのストーカー被害を受けた女がいるんだ」

「そうなの? でもいま俺そんなに困ってないし、先輩いい人だし、一回付き合ってみてもいいかなって思ってるくらいだけど」

「は!?!?」

まさか善の口から付き合っても良いなんて言葉が出てくるなんて。本当に俺の予想通り、あの男をパトロンにでもする気なのか?

「善、思い直せ。あんな奴と付き合う必要なんかない」

「どうして真宮くんがそんなこと言うんだよ」

「だってお前、戸田のことなんか全然好きじゃないだろ」

俺の言葉に善の表情が固まる。図星だと顔にかいてあった。

「好きじゃない奴と付き合う必要なんかない。これからも俺がずっと差し入れするし、今までと何も変わらなくていいんだよ」

「好きじゃないって、何で真宮くんがわかるわけ?」

善の表情が暗い。教室では絶対に見せない顔つきだ。

「俺は今日子から善の話をたくさん聞いてた。今日子は善のこと、すげぇ大事な友達だと思ってたから。だから俺にとっても善は大切な存在なんだよ」

もう少しで俺が今日子だ! と善に話してしまいそうだった。焦る俺の目の前で善は固い表情を崩さなかった。そして予想外の言葉を口にした。

「じゃあなんで、キョウは俺を捨てていったんだ……」



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