ストレンジ・デイズ
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そこから、戸田の怒涛の猛アタックが始まった。学年も違うのに休み時間のたびにうちのクラスに来て善に近づく。唄子はその熱烈っぷりに感動してすっかり応援ムードになっている。お前は八十島×俺推しではなかったのか。
「唄子! アイツまた来てる!」
「一途な愛だわ……素敵…。あたしメガネ結構好きなのよね。攻めでも受けでもいけるわ〜」
「何でそんなぽっと出のカップルに萌えてんだ!? 俺が美少女じゃなくなっても、俺総受けを推してくって言ってたじゃん!」
あんな当て馬許せない! と怒ってくれるかと思いきやまさかの裏切りだ。こいつは雑食すぎる。男同士なら何でもいいのか。
「えー、だって今のキョウちゃんって八十島くんとほぼ接点ないじゃん。現時点では戸田先輩の方が仲良いんじゃない?」
「そんな酷いこと言うなよ!」
善と仲良くなれなくて悲しんでいたところに、ストーカー野郎が善とぐいぐい距離を詰めていくのが気にくわない。ショックなのは、善がそれほど嫌そうにはしていたいところだ。
「なんか八十島くんの勉強とかみてあげてるらしいよ。結構仲良くなってるみたい」
「はああああ?」
「はー、やっぱり美形同士の組み合わせは絵になるわー。こうしてみると結構お似合いよね」
「全っ然似合ってない。善はアイツにストーカーされてんだぞ! 何とかしねぇと」
「ストーカーされて困ってるって、キョウちゃん八十島くんから相談でもされたの?」
「え、いや…それはされてねぇけど」
「じゃあもしかしたら、戸田先輩って八十島くんのタイプなのかもよ? 二人が円満に付き合うなら良くない?」
「……」
確かに、トミー達が恐れているストーカー行為に熱中するあまり生徒会の仕事がないがしろになるというのは、善と付き合ってしまえばそれほど問題ないのかもしれない。
「それでも、納得いかない……」
「ん? 何が?」
「だいたい、あの戸田とかいう奴が善の好みのタイプとかありえねぇ。俺にはわかる。善に恋愛感情はない」
「それキョウちゃんの願望じゃん。じゃあなんで八十島くんはあんなに愛想よくしてるわけ?」
唄子に言われてよくよく考えてみる。確かに今の善の対応は当たり障りがないというどころか、来てくれて嬉しいくらいの反応だ。笑顔も多いしその気のない相手に向けるような表情ではない。
「もしかしたらアイツ、戸田をパトロンにしようとしてるかもしれねぇ……」
「はい?」
「俺……小宮今日子が学校やめたから、今は食事を差し入れる奴がいない。きっと善は金欠なんだ。だから無害そうな先輩を利用して夕飯奢ってもらおうって算段なのかもしれない」
「ええ? 八十島くんってそんなキャラだっけ?」
唄子は疑っていたが、一度そう思い込むとそうとしか考えられなくなった。善はあれで結構したたかな奴である。戸田がヤバい系のストーカー男だと善が知らなければそういう考えを持つかもしれない。俺が善を助ける、と謎の使命感が芽生えてきていてもたってもいられなかった。
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