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ストレンジ・デイズ
□夏川夏、富里ハルキ、美作漢次郎


その後、俺の携帯にトミーから連絡が入った。何故か彼に荒木とのひともんちゃくがバレていて、詳細を聞きたがったので久々にお昼を一緒に食べることにした。
ちなみに、トミーには俺が小宮今日子だったことはバレている。なぜバレているのかはわからないが気がついたらバレていた。香月もトミーは知ってて当然という態度だったので、夏川が話したのだろうか。

その辺りもついでに聞き出そうと思って学食の生徒会専用スペースへ向かったが、夏川と漢次郎も一緒だった。夏川はまだしも漢次郎はなぜいるのか。彼がいては小宮今日子の話ができない。いや、漢次郎のことは今でも好きだしいてくれるだけで癒されていいのだが、この場で俺達は初対面だ。演技力皆無の俺にはつらい。

「てめぇ誰の許可を得て夏川さまの隣に座ろうとしてんだよボケ。その間抜けな面一生見れねぇくらいボコボコにしてやろうか?」

「……」

少し会わないうちに漢次郎は知らない人になっていた。いや見た目は可愛いままなのだが、どこのヤク○だろうかというくらい顔も声も怖い。

「美作、そんなやつほっといて俺の隣に来いよ。ハルキに用事があるだけだから、そのうちどっか行くだろ」

「夏川さまがそうおっしゃるなら……」

突然顔も声も元にもどって夏川の横にしずしずと座る。前に漢次郎を怒らせるとめちゃくちゃ怖いという話を夏川から聞いたことがある。本当だった。

「響介くん、来てくれてありがとう。怪我がなさそうで良かったよ〜」

トミーが相変わらずパーティーでも始めるのかというくらいの量の料理を運びながら俺に話しかけてくる。俺が生徒会専用の席に座っていることが奇妙なのか、今日子でいた時の何倍も周囲から注目されていた。

「荒木君に絡まれてたんだって? 何でそんなことになったの?」

「小宮今日子の連絡先をしつこくきかれたんですよ〜。おしえないって言ったら逆上されて!」

「ええっ、それは酷い。手荒なことはされなかった?」

「きゃーっ、トミー先輩優し〜〜…あ、違う今のなし」

今日子だった時のトミー用のぶりっこキャラがつい癖で出てしまった。漢次郎は目を見開いて絶句しているし、隣の夏川は声を殺して笑っている。机の下から夏川の足を蹴ってやった。

「でもなんでトミー先輩が知ってるんですか」

「戸田からきいたんだよ」

「戸田って誰?」

「……いま僕の隣にいるんだけど……その時会ったんじゃ……?」

先輩に言われて初めて隣を意識すると、確かに人がいた。一人黙々と食べているので気がつかなかった。

「いいんだよ富里。俺、影が薄いから」

その眼鏡をかけた男を見て、今日荒木から助けてくれた生徒だとようやく気づいた。

「思い出した! さっきは助けてくれてありがとう!」

「助けたなんて大袈裟な。俺は戸田暁生。改めてよろしく」

「俺は真宮響介。戸田は最近生徒会に入ったのか?」

「……いや、ずっといるけど」

「そうなの!?」

正直生徒会メンバーと過ごすことが多かったにも関わらず顔を見た覚えが一度もない。存在すら知らなかった。

「俺見たことないんだけど」

「そりゃあ響介くんは転入してきたばったかりだもんね〜〜ね〜〜」

トミーから露骨にウインクで合図をされて、余計なことを言わないように口をつぐんだ。漢次郎は俺の態度にすっかりご立腹らしく、どんっと机を叩いた。椅子から立ち上がり俺の目の前に威圧的に立ちはだかる。

「さっきから敬語も使わずに偉そうにしやがって…だいたいお前は誰なんだ!? 何でここに座ってる!? 夏川様に近づこうったってそうはいかないからな」

「美作、落ち着けって。こいつは俺に興味なんかねぇよ。だいたいもう彼女がいるしな」

「彼女!?」

俺は驚きのあまり声が裏返ってしまった。俺に彼氏はいるが彼女はいない。

「阿佐ヶ丘さんと付き合ってるんだろ」

「いやそんなわけ……」

あわてて否定しようとしたが夏川が口パクでそういうことにしろ、と必死に訴えかけてきた。彼女持ちなら漢次郎の態度も軟化するのではないかと思ったらしい。

「とにかく、転校生だから知らないのかもしれないけど、いくら気軽に座っていい場所じゃないから。彼女持ちとか関係ない」

「俺は彼女なんかいない!」

「ん!?」

「俺は漢次郎の親衛隊に入ったから! ほら、会員証」

「……ん!??」

「俺は漢次郎がどんなに怖くても構わない! 一生ファンでいるから、俺が女と付き合ってるなんて思わないでくれ!!」

俺が立ち上がる手を取ると「ひいっ」と叫びながら夏川の後ろに逃げてしまう漢次郎。ヤバいファンができたと警戒されてしまったが、その後近づいて威圧されることもなくなった。


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あきゅろす。
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