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ストレンジ・デイズ
□樽岸遊貴、荒木実美


「おい! おい響介!」

放課後帰ろうと寮までの道のりを歩いていると、遊貴先輩に声をかけられた。俺がここに転入してきた時は驚いていたが特に話しかけられることもなくスルーしてくれていたので油断していた。美女の姿でなくなった今、どんな嫌がらせをされるのかと身構えていたが先輩の態度は今日子だった時とあまり変わらなかった。

「実はお前に頼みがあって……いや、俺は無理だって突っぱねたんだけど」

「? 何ですか」

「お前に、うちの荒木さんに会ってほしいんだよ」

「荒木さん?」

「デフのトップで小宮今日子に片想いしてた超美形の先輩!」

「……ああ!」

さすがに奴の事はよく覚えている。サボりの生徒会役員でその見た目に反して小山内のことを襲おうとした不良だ。ということであまりいい印象がない。

「いいけどなんで俺に」

「お前に小宮今日子との橋渡しをしてほしいんだと。諦めきれてねぇんだよ、あの人」

「えーー! そんなの俺が話せることなんか何もないって先輩わかってるじゃないっすか!」

他ならぬ俺が小宮今日子なのだ。だから小宮今日子は現実には存在しないし、橋渡しなどできるはずがない。

「だから俺だって必死に説得したけど、本当の事言うわけにもいかねぇしどうしようもないだろ。それに別に荒木さんも俺に頼んできたわけじゃなくて、デフ全員にお前を連れてこさせるように指示してんだよ。だったら俺がやる方がマシだろ? 知らねー野郎に突然拉致されるよりマシだと思って感謝しろ」

確かに荒木は俺が小宮だとは知らない。本当のことを言うわけにはいかないが、諦めてもらうためには小宮今日子のイトコということになっている俺が説得するべきかもしれない。

「わかりました。やるだけやってみます」

「良かった! もうあれから荒木さん手つけられなくて困ってたんだよ〜」

遊貴先輩はよほど困っていたのか安堵の表情を見せる。正直俺としてはまったく気が進まなかったが、先輩の言うとおり突然見知らぬ不良に連れ去られたりするよりは、今大人しくついていった方がいいだろう。

しかし先輩がいるとはいえ、可愛い女子という肩書きがなくなった俺にデフの不良どもが何をしてくるかわからない。香月に話してから行こうかと思ったが、確か今日は出張中だ。連絡したところで無駄に心配されるだけなので、唄子に荒木と話をつけてくる、とメッセージを送っておいた。場所も何も書いてないので何かあったときに助けに来てもらいたいわけではないが、何も言わないよりマシだろう。


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あきゅろす。
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