ストレンジ・デイズ □ ほっとして急に力が抜けてその場に座り込む。咄嗟に俺の身体を夏川と香月が受け止めた。 「大丈夫ですか!?」 香月が泣きそうな顔で俺に問いかける。香月を安心させるためにも俺は笑って答えた。 「ヘーキヘーキ、ちょっと腰抜けただけ。情けねぇな俺も」 「ああ、良かった…キョウ様がご無事で……」 自分の手がまだ震えているし、足もガクガクでまだとても立ち上がれそうにない。これなら唄子の方がよっぽど肝が据わっているだろう。 「そうだ唄子、香月、唄子の様子を見てきてくれ。俺のせいで怪我してるかもしれねぇ」 大怪我はしていないだろうが、あれだけ刃物を近距離で振り回されたのだ。傷の一つくらいできていてもおかしくない。 「わかりました。確認してまいります」 俺の不安に気づいた香月がすぐさま唄子を探して駆け寄っていく。唄子は何人かの教師に保護されていて、香月に向かって笑顔で応える唄子を見てほっとした。 「良かったな、とりあえず元気そうだ」 俺を後ろから支えていた夏川に声をかけられ安堵の息を吐く。そのまま奴に体重をかけて放心していた。 そこから先は一瞬の出来事だった。気がつくと取り押さえられていたはずのナイフ男が俺の目前まで迫っていた。ろくな訓練も受けていない教師たちの拘束を一瞬の隙について抜け出し、落ちたままになっていたナイフを拾い上げ俺を殺そうと執念で向かってきていたのだ。目前に来られるまで気がついていなかった俺は、気がついた時にはナイフの切っ先がすぐ側にあり、逃げることができなかった。 「っ……!」 確実に刺されたと思ったのにいつまでたっても痛みが来ない。不思議に思っていると自分が誰かに抱き込まれていることに気がついた。 「うっ……」 「夏川?」 俺を庇うような体勢をとっていた夏川の身体が崩れ落ちる。向かってきた男は膝をつき、震える手で血に濡れたナイフを持っていた。 「夏川!」 奴のシャツが血に濡れている。もちろん俺の血じゃない。こいつ自身のだ。 「くそっ! キョウ様!」 すぐさま駆けつけた香月が夏川を刺した男を勢いよく蹴り飛ばし昏倒させる。少し遅れて他の教師達が数人がかりで再び男を取り押さえるのを俺は呆然と眺めていた。 俺は夏川が目の前で倒れるのを、ただ見ていることしかできなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |