ストレンジ・デイズ
□疑心
それから、約一ヶ月後。
「……で、結局お前がここを出ていくって話、なくなったんだっけ?」
「なくなってねえよ」
放課後、生徒会長の夏川夏に捕まって話をしていた俺は痛いところをつかれてしまう。あれから俺の日々は変わりなく、転校なんて話はなかったかのように過ごしていた。トミーとも気まずかったのが嘘のように今ではまた時々一緒にランチするようになり、無事に仲直りできてしまっている。時というものは色んな問題を解決してくれるのだと実感した。
「俺は早くここを出る予定だったんだけど、まだ学校が決まってないらしくって」
「何で? 頭が悪いから?」
「ちげーよ!」
違うと否定したものの本当はそうだったらどうしようと不安になる。しかし香月にどうなってるのかと訊こうとしてもいつも流されてしまっていた。
「香月にいくら聞いてもはぐらかされるっていうか、むしろ何か避けられてる? 気がして…」
あれから香月とはあまり話せていない。テストを作るのに忙しいのだと言っていたが、今までこんなに会えなかったことなどなかった。
「あいつ、お前をここから出したくないんじゃねーか」
「は? 香月が…? 何で?」
「だってここを出たらお前、その女装やめるんだろ。その可愛い姿につられて付き合ったんなら、やめてほしくないって思うのが普通だろ」
「はあ?!」
香月が俺の女装目当てで付き合ってるなんて、そんな馬鹿な話があるものか。いやでも、これまでずっと一緒にいたのに俺が好きな素振りすら見せたことがなかったのに、それがここで女装をした途端、あれよあれよと付き合うことになって…いやいやいや! 香月はそんな奴じゃない!
「……いや待てよ、お前は何で俺と香月が付き合ってるの知ってんだよ!」
「ああ、やっぱりあいつと付き合ってたんだ。だと思ったよ。お前らってわかりやすいもんな」
「……」
鎌を掛けられた。いや、この男の勘が良すぎるだけか。もうこいつに香月と付き合ってることが知られたって構うものか。それよりも奴に今の言葉を撤回させなければ。
「香月は俺に本気なんだよ。女装姿なんか関係ねえ!」
「だったらなんでお前をここから出さねぇんだ?」
「それは……」
「お前の家の財力があれば編入なんて簡単だろ。こんなに時間がかかるわけがない」
「さらっと俺の家を調べてんじゃねえよ」
ストーカーかお前、と思いながらも夏川のいうことには一理ある。香月が何か隠しているのではないかとは俺も思っていた。でも俺は香月を信じていたから、ここまで黙って待っていたのだ。けれどそれももうそろそろ限界だ。香月には、ここにいなきゃいけない理由でもあるのだろうか。
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