ストレンジ・デイズ
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もうすぐこの学校ともさよならだと思うと名残惜しくなるものだ。俺は休み時間一人あてもなく敷地内を歩いてまわっていた。遅刻しそうになった時近道で通った中庭、香月に通るなと言われた校舎裏、ちょっと覗くくらいならいいかなと思って散策していると、突然腕を捕まれた。
「?!」
不審者かと思ったら、俺の見知った顔だった。ものすごい美形だな、と思ったらいつぞや俺を助け、俺をピンチに追い込んだ男だ。
「お前確か…えーっと」
「荒木、実美…」
消え入りそうな声で名前をおしえてくれる。前回香月は自分の女だとか嘘ついた上に小山内を襲おうとしたことを謝るつもりかと思ったが、その時の俺は確か変装していたか。
「なんだよ、離せよ」
「きょ、今日子に、ききたいことがあって…っ」
「は?」
今日子って馴れ馴れしく呼んでいいとでも思ってるのかとキレそうになるが、前回会った時とは別人のようにおどおとしているので、俺が思っている奴とは別人じゃないかという可能性も出てきて何も言えなくなった。
「富里ハルキのこと、好きなのか」
「はあ?」
こんなよく知らない奴にまでトミー先輩のことをきかれついキレてしまう。善にきかれるのと、こいつにきかれるのは訳が違うので冷たい視線を返した。
「そんなのお前に関係ねーだろ」
「あんな奴のどこがいいんだ。俺の、方が…」
「うぜえって」
思いっきり腕を振り払おうとしたが向こうの力が強すぎてビクともしない。けれど痛そうに顔をしかめた俺を見て向こうがとっさに手を離したので、バランスを崩してそのまま後ろに倒れてしまった。
「うわっ」
「危ねえ!」
助けようとしてか荒木は手を伸ばしてきたが、そのまま俺と一緒に転倒する。上に覆い被さる形になっていたので圧迫されて重い。
「どけ、重い…」
「悪い……ってえっ」
奴が顔を真っ赤にしているので何かと思ったら奴の右手が完全に俺の胸の上にあった。とはいえ俺に胸などあるはずもなく、パット入りのブラが完全に潰され、胸板に触れていただけなのだが。
「ぎゃあ!」
「ぶっ」
このままじゃ男だとバレる! と全身全霊を込めて荒木に殴りかかりそのまま走り去る。背後で奴が何か言っているようだったが、聞こえないふりをして逃走した。
「やばいやばいやばい!」
荒木がどんなやつかよくわからないが、どれだけ鈍感な男物でも胸がないのは確実にバレた。男だと感づかれたかもしれない。
「どうしよどうしよ! どうしよー!」
こんな土壇場でデフの危険人物に正体がバレるなんて絶対に許されない。俺は人目も気にせず半泣きになりながら走り続けていた。
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