ストレンジ・デイズ
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「言いたくなかったら、言わなくていいんだけど……」
「うん」
「あの、副会長……富里先輩と、何かあった?」
「お前もそれかよ!」
善の質問に思わずそう叫んでしまう。俺がトミーと話さなくなっただけでどれだけ噂になってるんだ。
「わ、悪い。触れちゃ駄目なことだったよな…」
「ああいや、ついさっき鬼頭の奴にも訊かれたばっかりだったから、つい」
しょんぼりしてしまった善に慌ててフォローを入れる。あの変態男にきかれるのと善とではまったく違う。単純に心配してくれてる相手になんて態度なのか俺は。
「キョウがなんかいつもと違うから、それはあの先輩と何かあったからなのかと思って」
「それは……」
まさにその通りだが、トミーがどうのこうのというより、もうすぐここから転校しなければならない事の方が俺の中で大きい。でもそれを善には話せなかった。話した時点でもう離れ離れになるのが決まってしまうみたいで。いや、それはとっくに決まっているのか。女装なんかしてたせいで、学校が違っても友達のままで、というわけにはいかないのだ。
「言いたくなかったらいいんだ。俺が、無理に聞き出すような事じゃないし……」
気まずい沈黙。善は親友なんだから、俺の様子がおかしかったら気にしてくれている。しかし話そうとすると何かしら嘘をついてしまうことになりそうだ。善相手にはなるべくそういうことはしたくない。
「ごめんキョウ、今のなし」
「え……?」
「富里先輩と何があったか、やっぱり知りたい」
善がいつになく真剣な目で俺を見る。その目に吸い込まれるようにすべてを話しそうになってしまったが、さすがにそれはダメだと口をつぐんだ。
「キョウは、先輩の事が好きなのか……?」
なぜそんなことをそこまで真剣に訊ねるのかと思ったが、親友なのにそんなことも知らないなんて確かに悲しい。善の前で、これ以上嘘をつくことはできなかった。
「好きじゃない」
「! そう…なんだ」
「ああ」
とたんに笑顔になる善に思わず首をかしげる。ここまで喜んでくれるならこれから何でも話そうと思えるくらいの笑みだ。
「だったらいいや。あ、いや良くないけど、なら何でそんな元気なかったんだ」
「善と話してたら元気出たから、もう大丈夫」
「なんだよそれ」
そう言うと善は照れたように笑っていた。この学校にはろくな思い出がないが、こいつに会えただけでもここにきて良かったと思える。善にとっては俺は数多い友達の一人かもしれないが、俺にとって善は唯一まともに親友と呼べる相手だった。
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