ストレンジ・デイズ
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その後は、特に変わりのない日常が続いていた。俺がトミーと食堂でご飯を食べることはなくなったが、夏川と一緒にたまに会いに来るので、話しかけられれば普通に答えている。
トミーにフラれたということよりも、俺が騙そうとしていたにも関わらず申し訳なさそうにしているトミーを見るのが気まずい。あと夏川と話すのも微妙に気まずい。漢次郎には会いたかったがこれ以上仲良くなっても別れがつらくなるので、俺が食堂へ行く理由はますますなくなっていた。
「キョーコさんキョーコさん!」
「あ?」
とある日の休み時間、鬼頭がトイレに行くため廊下に出た俺の腕をぐいぐい引っ張って顔を近づけてくる。俺なそれをうまく避けながら奴を睨み付けていた。
「何だようるせーな」
「あのよく一緒にいたロン毛の先輩にフラれたって本当なのか!?」
「はあ!?」
「あのロン毛でサーファーみたいなチャラい先輩にフラれたって、本当…」
「うるせーそんな大声出さなくても聞こえてるわ! あと先輩の悪口言ってんじゃねー!」
昔はもっと真面目な見た目だったんだぞと謎の言い訳をしそうになる。だが俺が言うべきことはそこじゃない。
「誰がそんなこと言った!?」
「噂で聞いたんだよ! 僕と愛を誓ったキョーコさんがまさか…」
「誓ってねぇよ」
噂ってどんな噂だと思ったが、あんなにわかりやすくまとわりついていた俺が突然彼を避けだしたらそんな風に思われても仕方ないかもしれない。
「別に、そんなのお前に関係ねぇだろ。俺がトミーに告白してたとして、お前は俺のこと諦めてくれんの?」
「は? それはあり得ないだろう」
「だろ? だったらそんな質問意味ねぇじゃん」
「た、確かに…?」
「わかってくれて嬉しいぜ。じゃ、この話はこれで終わりってことで」
なんとか鬼頭を丸め込むと、うんうんと頷きながら何か言われる前に後ずさる。鬼頭はしばらく考え込んでいたようだったが、俺は逃げるようにその場から立ち去った。
廊下を早足で歩きながら険しい顔で人の間をすり抜けていくので、周りが怪訝そうに俺を見ていた。別に噂なんかどうでもいいが、失恋して落ち込んでいると思われるのも癪だ。けれどあながち嘘でもないので、否定しきれない。
「あ、キョウ」
ずんずん歩く俺に話しかけてきたのは善だった。数少ない友人に笑顔で呼ばれて俺の苛立ちが少し緩和される。
「どこ行くんだ?」
「……どこだっけ」
「はは、何それ変な奴」
「うるせーな。お前が話しかけるから忘れたんだろ」
むくれる俺が理不尽なことを言っても善は怒らない。いつも通りの優しい笑顔で話し続ける。
「だって恐い顔して歩いてるから、思わず話しかけちゃったんだよ」
「してねぇよ」
「キョウ、お前さ…」
「?」
笑っていた善が躊躇うように言いよどむ。善らしくない。俺が近づくと、意を決したように口を開いた。
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