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ストレンジ・デイズ



「仮に俺がそれを信じるとしても、俺は…お前の気持ちには応えられないっていうか…」

夏川を真剣にふっている自分に違和感を感じつつ、丁重にお断りする。俺には香月がいるのだから当然の答えなのだが少し心苦しい。今まで俺を追いかけ回してきた男は全員この顔に惚れていたのだ。なのに夏川は俺の素顔を見て、好きだと言っているのだ。そのせいで他の男と同じように無下にできないのだろうか。


「お前、付き合ってる奴がいるんだろ」

「え!? 何で?!」

夏川があまりにも言い当ててくるので怖くなってくる俺。そして俺の反応も嘘がつけない人間みたいになっている。

「いや、ちょっとな。てかお前そんなわかりやすくて大丈夫かよ」

「アンタが言い当てすぎて怖いんだろ! エスパーかよっ」

「だって恋人でもいない限り、迷わず俺の告白断るなんてないだろ」

「それはナルシストすぎるわ!」

突っ込みで誤魔化したもののまともに告白されたのが恥ずかしくて相手の顔も見られなかった。さらに距離を縮められて身体がすくむ。

「安心しろよ。前とは違う。本気で好きな奴に無理やり触るわけねぇだろ」

「信じられない…っていうか、もし、マジで言ってるなら、俺なんか早く忘れた方がいいんじゃねぇの」

「恋人がいるから? 俺がそんなことで諦めるとでも思ったのかよ」

そこは諦めるところだろうと思ったが、こいつは稀にみる自信家なのでそれは理由にならないのだろう。なんとか諦めてもらえないだろうかと説得する材料をひねり出す。

「それに、あの俺、この学校もうすぐやめることになる、と思うし…」

あまり話したくはなかったが、どうせすぐにでも知られることになるのでカミングアウトしてしまった。さすがの夏川も予想外だったのか目を見開いて驚いている。

「何で?」

「えっと、この女装生活に色々限界感じてきたというか」

「悪の組織はもういいのかよ」

「は? ……ああ! うん、それはもう大丈夫大丈夫」

一瞬、悪の組織って何だと思ったが確かそういう嘘をついてたんだったか。馬鹿馬鹿しすぎてこいつも信じていないだろうと思うのだが。

「……まあ、それならそれでもいい。俺も、お前はここを出た方がいいと思ってたからな」

「えっ、何で!?」

俺のことが好きだったんじゃないのかよ! とあと少しで口に出しそうだった。こいつにそんな風に思われてたなんて知らなかった。

「何でって…お前だってわかってんだろ。お前の女装姿じゃ、馬鹿なこと考える野郎がいてもおかしくない。現に何度か襲われてるだろ」

「な、なぜそれを」

「生徒会長なんだから、情報は入ってくる。俺だって響介がいなくなんのはつまんねーけどな、ここにいる限り心配し続けなきゃならねぇだろ。それなら他の普通の高校で、普通の高校生男子として生活してくれてた方がいい」

「……」

俺の身を案じる夏川に驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。まさかこいつ、本気で俺のことが好きだったのか。

「それに、俺ならお前がいくら逃げようともすぐ見つけられるからな。ここの理事長とは知り合いだし、お前の名前も知ってる。真宮響介、どこに転校しようとまた会いに行くからな」

「……」

にこにこ笑いながらキザっぽく笑う夏川。フルネームが知られていることに驚きつつ、俺はこの男にはかなわないかもしれないと思い始めていた。


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あきゅろす。
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