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ストレンジ・デイズ



俺は事の顛末を帰ってきた唄子に話すと、当然ながらトミーの事は唄子も知らなかったらしくすごく驚いていた。近々自分に見合った学校に転校する事を伝えると、唄子は予想以上にショックを受けていた。

「えーー! やだやだ! キョウちゃんいなくなっちゃうの?? むりむり! 絶っっ対無理!」

「し、仕方ねぇじゃん…もう女装する意味なんかなくなったんだから」

唄子に駄々をこねられてちょっと嬉しくなる俺。こいつとも色々あったが、今では結構気心の知れた仲なので離れるとなると少し思うところもある。

「またうちに遊びに来ればいいだろ。休みの日とか…」

「キョウちゃんいなくなったら、私は誰と誰をくっつければいいの?! 今さらキョウちゃん以外となんて、私の腐魂が受け付けるわけないじゃない!」

「そっちかよ!」

ちょっと寂しくなるとか思った俺の気持ちを返して欲しい。やっぱりこの女といるとろくな目にあわない気がするから、一刻も早く距離を置くべきかもしれない。

その後も唄子は香月さんに直談判する! と意味のないことを言っていたが、この女装に色々限界を感じていた俺はなるべく早くここを出るべきだと思っていた。




次の日、トミーにしばらく食堂には行かないと連絡した俺は教室で弁当を食べていた。唄子含む女子チームにお誘いを受けたが、なんとなく一人になりたかったので断った。もうすぐ転校すると思うと誰かと話をする気力もなくなっていた。
一人弁当を食べる俺を見て何があったのか遠巻きに見る男達もいたが目をあわせないようにしていると、俺に客が現れた。

「おい」

「うっわ」

目の前にいたのは夏川だった。突然の会長の登場にビビったのは俺だけでなく、周りの生徒もどよめいている。

「安心しろ、ハルキはいねえよ」

「いや、まずなんでお前が…」

「ハルキに会いたくないって言ったそうだな」

「え」

確かにその通りだが、まさかこいつはわざわざそれを咎めに来たのか? こうなるのは想定の範囲内だっただろうと思うのだが。

「本当はここにあいつも来ようとしたんだけど俺が止めたんだよ。しばらく一人にしてやれってさ」

「だから感謝でもしろってか」

「いや、個人的に話がしたくて。ちょっと出られるか」

「……」

「何ならここで大声で話してやってもいいけど?」

「いく! 行きます!」

半ば脅しのような誘いに渋々立ち上がり、夏川の後についていく。今ここに鬼頭や善がいなくて良かった。いれば夏川と一悶着起こしていたかもしれない。

奴について長々と歩かされた先にあったのは、生徒会室だった。久しぶりに入る、というか俺には一生縁のない部屋だろう。相変わらず無駄に豪華だ。

「ここなら誰にも聞かれずにすむからな」

「そんな大事な話? 別に俺はお前と話すことなんかないんだけど」

ソファーに身体を沈めながら、夏川を見上げる。奴は何故か真向かいでなく俺の横に座って、こっちを真剣な目で見ていた。

「ハルキに会いたくないってのに、とやかく言うつもりねぇ。本当にあいつが好きだったんなら、仕方ないしな。でも」

「……なんだよ」

「響介、お前本当にハルキが好きなのか?」

「っ……」

前にも一度された質問だが、夏川があまりに真剣な顔だったので今回はすぐには答えられなかった。好きに決まってる、とすぐに嘘をつくべきだったのに。

「……やっぱりな。お前が何でそんな嘘ついてんのか知らねぇけど、だったらお前こそハルキに謝るべきじゃねぇの」

「違っ……だいたい何でそんな、余計な口出ししてくんだよ。そんなのお前に関係ないだろ」

「ある!」

「…トミーが大事な親友だから?」

こいつがそんなに友情に厚い奴だとは思わなかった。だが夏川ははっきりと首を振って否定した。

「そっちじゃなくて。俺はお前が好きなんだから、関係あるだろ」

「……は?」

夏川の告白に頭が真っ白になる俺。距離を詰められて反射的に逃げた。

「何で…? いつから…?」

「前に言っただろ」

「言ってねえし!」

「そうだっけ」

いけしゃあしゃあとそんなことを言う夏川に、その言葉を鵜呑みにしていいのかわからなくなる。好きならもっと態度に出せよと言いたかったが、それはそれで困るだろう。こんな言葉に動揺して焦ってる俺の方が馬鹿みたいだ。


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