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ストレンジ・デイズ



「おい、ちょっといいか」

トミー、夏川、漢次郎とのランチが終わった後、俺はこっそり夏川だけ呼び止めた。最近のこいつは隙あらば俺と絡もうとしていたので、漢次郎にさえバレなければ二人きりになるのはわりと簡単だった。

「何だよ、そっちから来るなんて珍しいな。やっと俺のものになる覚悟ができたのか」

「はいはい今はそういうのいいから。ちょっと訊きたいことがあるんだけど」

「? 何だよ」

「どうすれば、トミーは俺の事が好きになるのかおしえてくれ」

俺のストレートな質問にぽかんと口を開けたまま硬直する。暫くの沈黙の後、顔をしかめて呆れたように言った。

「お前まだ諦めてねぇの? あんなに脈なしなのに?」

「うるせぇよ」

俺だってまったく相手にされてないことぐらいわかっている。だからこそどうすればトミーに恋愛対象として見てもらえるのか知りたいのだ。

「何やったって、これまでの努力が実らなさすぎて困ってんだよ」

「…お前、よくそんなこと俺に頼めたな」

「え?」

いったいそれはどういう意味なのか。見返りにすごいもの要求されるとか、それとも俺が嫌いだから助ける理由がないとかなのか。

「な、馴れ馴れしく頼み事できる間柄じゃないだろってこと…?」

「何でそうなる」 

「だったら頼む夏川! この通り! 俺はもうお前にお願いするしかねぇんだよ。助けてくれ」

「……」

手を合わせて頭を下げて頼み込む。夏川からすれば都合の良いときだけすり寄ってきていい気分ではないだろうが、かなり追い詰められていた俺はなりふり構っていられなかった。

「…余計なことだからずっと黙ってたけど、さすがに可哀想になってきたから言うわ」

「?」

「ハルキは、恋愛対象男だぞ」

「…?!」

訳がわからず唖然としている俺を夏川が同情的な顔をしてこちらを見ている。トミーの恋愛対象が男だなんて、そんな馬鹿な話は信じられない。

「そんなわけねぇだろ! へ、変な冗談言うな」

「冗談なんかじゃねぇよ。お前がもし告白したらハルキだってちゃんとおしえてくれるだろうよ」

「いや、だって、そんなこと誰も…」

「知ってるやつなんか殆どいねぇからな。あいつが隠してるし」

「な、何で?」

普通の学校ならともかく、この環境で隠す必要などないだろう。何よりトミーに男が好きなんていうイメージがなさすぎる。

「あいつ、男でも大人の男じゃないと駄目なんだよ。だからここの生徒には興味がなくて、好かれても困るから女が好きってことにしてるらしい」

「それマジで言ってんの? 嘘だったら許さねぇんだけど」

「だからマジだってば! 疑うなら本人にきけよ! まあ友達の性癖勝手にペラペラしゃべった俺は怒られるかもしれねぇけど」

「……」

にわかには信じられなかったが、思い当たる節がないでもない。トミーはあの人類史上最高の可愛さを持つ怜俐の告白を断ったのだ。そして今も超美少女の俺にすらまったく興味がない。これで男が恋愛対象じゃなかったならなんだというんだ。もっと早くその可能性に思い至るべきだった。

「と、とりあえず本人にきいて確かめる。夏川の名前は出さねぇようにするから…」

「いや話したのは事実だし、言ってくれていいけど。つか俺から話して謝っとくし気にすんな」


昼休み終了のチャイムが鳴り、俺と夏川の話はそこでいったん終わった。その後の俺は何も手につかず、ずっと夏川に言われたことを考えていた。


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