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ストレンジ・デイズ
□別れ


俺の名前は小宮今日子。誰もが認める美少女だ。
あまりにも美しすぎるので入学早々俺に惚れた男どもやそれに嫉妬する男どもと色々一悶着あったが、学校生活は順風満帆である。漢次郎という可愛い友達や八十島善というちょっとアレだが超良い奴な親友もできた。学校の成績は悪いが、周りが助けてくれるのでなんとか乗り切っている。

それに何より、俺にベタぼれの彼氏ができた。俺の事が相当好きらしく、俺もその気持ちに折れて付き合っている。恋人になっても関係はそう変わっていないはずなのに、香月より俺の方が妙に浮き足だってしまっている気がするのが何だか悔しい。でもそんな贅沢な些細な悩みなんて関係ないくらい俺の学生生活はとても順調だった。




「いやいや、このままじゃ駄目だろ!!!」

「うわ、びっくりした」

寮の部屋で突然叫び出した俺に勉強中の唄子が飛び上がって驚いた。夜中の9時を過ぎて大声で叫んだのは悪かったが、唄子がギロリとこちらを見てきた。

「なに? いきなり。ビックリしたんだけど」

「いや何か俺って本来の目的忘れてここでの生活エンジョイしちゃってるなって」 

「本来の目的?」 

「トミーを俺に惚れさせる事だよ!!!」

そう、それこそが俺がこんな女装までして山奥の学校に通ってる理由だ。これが達成されない限り俺はこの学校をやめられない。

「ああ、そういえばそんな理由だったっけ?」

「そんな理由だったよ!」

大事な大事な妹の怜悧の頼みなのだ。これだけは絶対にやり遂げなければならない。

「トミーとは仲良くはなってると思うんだけど、全っ然まったく俺に惚れる気配がない」

「うーん、単純にキョウちゃんがタイプじゃないんじゃない?」

「アホかお前! こんな可愛い俺相手にタイプとか関係ねぇだろうが!」

「そういうとこが駄目なのでは?」

惚れさせてこっぴどく振るのが目的なので直接的な事は何も言っていないが、自分なりにアピールはしているつもりだ。弁当を作ったりベタベタしてみたり、トミーだって喜んでいるはずなのに、今一つ恋愛対象として見られていないのがわかる。

「これ以上どうすりゃいいんだよ…この顔をもってすれば簡単に惚れさせられると思ったのに」

よくよく考えてみればあの怜悧ですらフラれてしまったのだ。女を見る目がつくづくないのだろう。

「だいたいトミーの好みのタイプって何だよ……B専か? デブ専か?」

「そんなことも調べてなかったわけ? リサーチ不足じゃん」

馬鹿にしたように鼻で笑って勉強に戻る唄子。確かに癪だが唄子の言う通りだ。彼氏ができて浮かれている場合ではない。

「唄子、お前トミーの好みのタイプおしえろよ」

「えっ、そんなの知らない」

「はあ?? いつもの自慢の情報網どうしたよ」

「だって富里先輩って浮いた話一つないんだもん。まあ男子校だからだろうけど。てか何であたしが女子との恋愛リサーチしないといけないのよ」

「た、確かに」

こいつがトミーに興味がないのは明白だ。奴が男好きにでもならなければ調べてくれないだろう。

「唄子に頼れないなら、俺が何とか調べないと…」

とはいえ俺は探偵でも情報通でも何でもないのだ。友達も少ないし調べる方法は限られてくる。

「仕方ねぇ、あいつにそれとなく訊いてみるか」

なるべく関わりたくない相手だが致し方ない。トミーを落とすにはもう手段は選んでいられないのだ。


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