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ストレンジ・デイズ



香月はギラギラした野生的な目をして俺を見ていて、普段の温厚そうな雰囲気はどこかへ消えてしまった。そのまま俺の顔に手をかけ口づける。

「……!」

男と、しかもずっと下僕的存在だった香月にキスされたらもう少し抵抗があるかと思ったが、俺はその間ずっと身を任せていた。触れ合うだけだったキスが、徐々に深いものになり香月の舌が侵入してくる。香月の熱が自分に伝わり身体が震えた。俺の左手に香月の指が絡み合い恋人繋ぎのようになったのでそのまま強く握りしめた。
俺に触れて香月が喜んでいるのがわかる。手を繋いだりだのキスしたりなんて、そんなことに興味はなかった。でも相手がこいつならもっと触りたいし、好きなようにさせてやりたい。もっともっと深く繋がって、香月を自分だけのものにしたい。


右手で香月の後頭部に触れながら積極的に受け入れていた俺は香月のキスのうまさに驚いていた。俺は経験がないからどんなキスがうまいかなんてわからないが、香月の動きは手慣れていてその事に猛烈に腹が立った。

ヒートアップしていた香月を無理矢理押し退け睨み付ける。そのまま勢いよく頬をつねった。

「お前ずいぶん手慣れてっけど、いったい誰に仕込んでもらったんだよ」

その言葉に香月は怒ったような傷ついたような顔をして俺に噛みついた。

「キョウ様、さっきから何なんですか! 俺は誰にも仕込まれてもらってませんし、あなた以外とこんなことしたいとは思いません。どうしてそんな酷いことを仰るんですか……」

泣きそうになる香月に俺はあたふたして何も言えなくなる。俺の事が好きなあまり俺からはなれようとしたぐらいだ。こいつが今さら浮気するなんて本気で思っていたわけじゃない。ごめんの意味を込めてぎゅっと香月の身体を抱いた。

「……俺は、響介様しか好きになった事はありません」

「うん、わかってるよ」

俺もきっと、香月しか好きになったことはないのだろう。怜悧のことをずっと一番に考えていたが、それは勿論家族としてだ。俺はもっと香月が喜ぶことをしたくなった。

「香月、とりあえずちょっとどけ。このままじゃ色々やりにくいし、お前に何もしてやれねぇじゃん」

「……キョウ様が何かする必要は、ありません。ただすべて俺に任せてくれたら、俺が……」

「?」

「キョウ様、俺はあなたを抱きたいんです。……今まで黙っていて、すみません」

「…………は?」

一瞬訳がわからなかったが、どうやら言葉通りの意味だと察する。悪い冗談かとも思ったが香月の目は真剣そのものだった。

「いやいや、いやいやいやいや」

「キョウ様?」

「俺が下? ……ないない、ないだろ!」

自分が女みたいに色々されていることを想像して吐き気がした。それをこいつが望んでるなんて、いったいどういう趣味をしているのかと。

「だって……お前は女より綺麗だし、おかしくないけど、俺が抱かれる方とかキモいじゃん。ぜえったい無理」

「キモくなんてありません。だいたいキョウ様、どんなことをするかちゃんとわかって言ってるんですか」

「わかってるに決まってんだろ。俺には参考になる教科書があるからな」

「?」

「香月、お前は俺の言うことをきけばいいんだ。今までずっとそうしてきただろ」

唄子のBL本がまさか役に立つとは。いやあれを参考にして良いかはわからないが、何をするかはわかっている。こちらが押せば香月だって折れてくれるだろう。
しかし予想に反して香月はゆっくり首を振った。

「……駄目です。それはできません」

「は? 何でだよ」

「……どちら側をやるかどうかは関係ありません。俺はキョウ様に手は出せないんです。だってキョウ様はまだ学生で、こんなのは犯罪で。旦那様にも申し訳ない……」

「ああ? 何でそこで祐司だよ!」

罪悪感でいっぱいの面をした香月に俺はいまにもキレそうだった。ここまでしておいて今さら何を言い出すかと思えば。香月は祐司のものじゃない、俺のなのに。

「祐司なんか関係ない。俺にキスしてきたくせに、何でそこでビビるわけ」

「俺だって、俺の方が…っ、俺の方がキョウ様のことをずっと思ってきたんですよ。ヤりたいに決まってるじゃないですか! キョウ様の側にいたらいつだって触りたくなるし、押し倒して俺のものにして…」

「わ、わかった。わかったから落ち着け」

香月の本音が駄々もれだったのでいったん止める。俺だけじゃなく、こいつが我慢をしているのは本当だろう。やつは俺が小さい頃から俺の世話をし続けてきた。そして俺だけじゃなく俺の家族、特に祐司には恩を返したいと思ってか、いつも感謝して尽くしていた。俺はそれが嫌だったのだ。ずっと、香月が一番に優先するべきは自分であるべきだと思っていたから。

「香月」

「……何ですか」

「お前に抱かせてやる」

「……?」

香月の真ん丸な瞳が俺を見つめる。とにかく俺は、すぐにでもこいつを本当の意味で自分のものにしたかった。

「ただし、今すぐしてくれんならな。今だったら俺が折れてやってもいいって言ってんだよ。俺の気が変わらないうちにさっさと押し倒せ、馬鹿」


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あきゅろす。
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