ストレンジ・デイズ
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「はあ!? 夏川の居場所がわからない!?」
「ごめんなさい! 先生に聞けばわかると思うんですが!」
小山内があまりに使えないので俺は奴と一緒に職員室に行くはめになった。教師の香月に聞けば早いかもしれないが、夏川に会いに行くのは反対されそうなので他の教師を探すことにした。
「えーっと、誰か知ってそうな奴は……」
夏休みだからか職員室にいる教師は少なかった。俺がきょろきょろと辺りを見回していると、小山内が俺の腕を引っ張ってきた。
「何だよ」
「あそこに藤堂先生が……」
小山内の視線の先にはふらついた足取りで廊下を歩く俺達の担任。奴のシャツは無駄にはだけていて息を切らしながら汗をかいてきた。
「……なんだお前ら。変な組み合わせだな」
「藤堂せんせー、生徒会長どこか知らねぇ?」
「あ?」
「生徒会長! この学校に帰ってきたはずなんだけど」
「知らねぇ」
据わった目付きでぞんざいに言われ、担任相手とはいえカチンときた。俺は止めようとする小山内を振り払い煽るように藤堂を睨み付ける。
「はぁ? 教師のくせにそんなことをもしらねぇのかよ。使えねぇな」
「……俺のこの酷い有り様を見て、先生どうしたんですかの一言も言えないような奴に暴言吐かれる覚えはねぇ」
「先生どうしたんですか」
「今さら遅ぇよ! 生徒の仕業だよ! 逃げてくるの大変だったんだからな。くっそ平の奴、ついに実力行使に出やがって……」
「へぇ。で、会長の場所は?」
「知るかボケ! 生徒会長なんだから生徒会室にいるんじゃねーの!! ほら、邪魔だからさっさと出ていけ」
「あ、ちょ……」
問答無用で俺達を職員室から追い出す藤堂。目の前でピシャリとドアを閉められ、鍵までかけられた。
「何であんなにキレてんだあいつ……。まあいいか、しょうがねぇから生徒会室行くぞ」
「え? ええ??」
俺はその足で踵を返して廊下を歩く。そして数メートル歩いたところで急ブレーキをかけ振り向いた。
「生徒会室の部屋、どこだっけ」
「……僕が案内するよ」
小山内に連れられて俺達は生徒会室までやってきた。生徒会室は南館3階にあり、俺はそのやけに大きな扉を躊躇いもなくノックした。
「……返事ねぇぞ。誰もいなくね?」
「予想通りだけど、いないね」
「くそー、せっかくここまで来たのに。生徒会長なら生徒会室にいろよ……ってアレ」
むしゃくしゃして取っ手に手をかけると、扉があっさりと開いてしまった。もしかして誰か中にいるのではとそっと覗いたが、人の気配はない。しかし俺はそれより部屋の豪華さに気をとられていた。
「何だこの豪華な部屋…どこのスイートルームだよ」
「駄目だよ小宮さん! 生徒会室に部外者が入ったら」
「別にちょっとくらいバレやしねぇよ。うるせーな」
無駄に広い室内に豪華絢爛な装飾品。とても学校内とは思えない部屋だ。
「生徒会室にいらない余計なもんまであるじゃねえか。この馬鹿でかいクローゼット必要か?」
「小宮さーん!! まずいって!」
小山内の言葉は無視して目の前の大きなクローゼットの扉を開ける。中には案の定何も入っていなかった。
「ここここ小宮さんっ」
「あ? なに?」
「廊下から人の話し声と足音が……確実にこっちに向かってきてるよ!」
「マジ?」
小山内に言われてようやく外に出ようと扉へと向かう。しかし俺の腕は小山内の小さい手によって掴まれてしまった。
「なんだよ」
「もう遅いよ! 階段から生徒会室までは一直線だから、僕らが出てくるところ絶対に見られる。どこか他の出口を探さなきゃ」
「他の出口ったって……」
唯一あった別の扉にすぐ手をかけたが、そこはなぜか鍵がしまって開かなかった。3階のため窓から逃亡するわけにもいかない。絶体絶命のピンチに、俺は小山内の腕をつかんで走った。
「な、なに?」
「仕方ねぇ、あそこに入るぞ!」
俺は開きっぱなしだったクローゼットの中に飛び込む。ギリギリ人が二人入れるスペースがあったので、そこに小山内と飛び込み扉を閉めた。
「何してるの!?」
「お前が出たら駄目だって言ったんだろ。ここに隠れてやり過ごすぞ」
「で、でもまずいよこれ……」
俺達が身を潜めてすぐ生徒会室の扉が開く音がする。暗闇の中息を殺しながら耳をそばだてていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
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