ストレンジ・デイズ
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「つーかお前従兄弟なのに、何であんな仲悪いの? 昔からあんな感じなわけ?」
小山内は確かにイラつく性格をしているが、あそこまで毛嫌いする程のことはない。こいつが会長に何かしたのだろうか。
「ううん。よく怒られてはいたけど、ここに来るまでは普通に話してたよ。でもこの学校では話しかけるなって言われてて、僕がそれを破っちゃったから怒ってるんだ」
「何で話しかけちゃダメなんだよ。見た目が根暗っぽくてキモいから?」
「キモ……。僕と従兄弟だって知られるのが嫌なんだって言ってた。え、僕ってキモいの?」
俺の言葉にショックを受けているらしい小山内。そんな髪型と冗談みたいな瓶底眼鏡をしているのだから当たり前だろうに。
「お前もっと髪型まともにして堂々としてりゃ可愛い顔してるじゃねぇか。眼鏡もはずせよ」
「こ、これは親から顔はなるべく隠せって言われてるから。なっちゃんもそうした方がいいって言ってたし……」
「……あー。なるほど」
きっとこの可愛すぎる顔は危険だと判断してのことだろう。今は女子がいるが少し前まで暑苦しい男子校だったのだ。あんな可愛い男子がいたら貞操の危機である。
「確かに親の気持ちもわかる。お前そのままでいたら襲われそうだもん」
「でも、この格好でも普通に襲われたけど」
何の事だと一瞬思ったが、すぐに会長親衛隊にリンチされたことだと思い出した。
「あー、あの時は大変だったな。ただ、それとはまた別の意味だよ」
「別……?」
「お前知らねぇのか。この学校じゃ男が男に突っ込んだりするらしいーぜ」
「つっ……!?」
男同士の爛れた関係に驚いているのか、女の俺の口から下品な言葉が飛び出していることに驚いているのか。小山内の顔は可愛そうなくらい真っ赤になっていた。
「かくいう俺も襲われたことあるぜ」
「え!? だ、大丈夫だったの!?」
「へーきへーき、返り討ちにしてやったし」
返り討ちにしたのは俺ではないが、ここは見栄をはっておきたい。明らかに俺を見る目が尊敬の眼差しに変わっていた。
「鬼頭くん相手にもいつも凄いもんね……。僕もそれくらい強かったら、なっちゃんも僕といるの嫌がらないかなぁ」
「もういいじゃん会長なんか。どうせ学年違うから会う機会なんか殆どねーし。あいつそこまでして仲良くしたいキャラじゃねぇだろ?」
「そ、そんなことないよ。なっちゃんは格好良いし頭も良いし」
「うん、性格悪いのが全部台無しにしてるよな」
「わ……るくないよ。でも夏休み前はちょっとイライラしてること多かったよね。結構ご飯食べ残してたし。体調悪いのかな」
「そうか? あー、でも確かにトミー先輩があいつの分も食べてやってたような」
トミー先輩と食堂にいるとおまけで会長もついてくるので、奴に嫌でも詳しくなってしまう。そのおまけで漢次郎もついてくるので文句はないが。
「小宮さんはいつもお弁当が多いよね。なっちゃんはラーメンばっかり食べてたみたいだけど、栄養バランス考えてるのかな。今日子ちゃんのお弁当よく勝手に食べようとしてるみたいだし」
「そーなんだよ! あいつすぐ盗ってきてさぁ、マジでムカついて……って何でお前そんなこと知ってんの」
「え……それはたまたま見かけて」
「毎日見てねぇとそんなこと言えないだろ。お前もしかしていっつも会長のこと見てんの?」
「み、見てない! たまにここで見かけて、だから知ってるだけだから」
なぜか耳まで真っ赤にして必死で否定する小山内に、俺はなんとなくピンときてしまった。昔の俺なら気づかなかったかもしれないが、今の俺はひと味違うのだ。
「もしかしてお前、やっぱり会長のこと好きなんじゃ……」
「違う! ないないっ、だって従兄弟だし、それ以前に男同士だし!」
可愛そうなくらい真っ赤になって全力で否定する姿に、ますます怪しくなる。こいつには悪いが俺には会長に片想いしてるようにしか見えない。
「別に男同士だとかはいいだろ。好きなら関係ねぇじゃん」
「で、でも…僕なんかに好かれても……」
「でもじゃねぇ! うじうじしてるやつはモテねぇぜ。なんなら俺が協力してやるから、男ならハッキリしろよ」
「は、はいっ」
俺に叱られた小山内はピシッと背筋を伸ばして俺に向き直る。そして顔を赤くしたままポツポツと話し始めた。
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