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ストレンジ・デイズ



「俺、前々から思ってたんだけど、あの会長とうちのクラスの小山内って付き合ってたんじゃないかな」

「はあ? いきなり何言ってんの」

俺の言葉に唄子が今まで見たこともないような引きつった顔をした。ちなみに小山内とは地味な目立たない男子で、いじめられっ子だが眼鏡をとると美少年という若干香月とキャラが被っているクラスメートだ。

「いったい何があってそんな考えになったのよ……」

「だって小山内が入学してくる前からの知りあいっぽいし、喧嘩の理由も痴情のもつれって感じじゃん」

小山内は性格はウザいが真の姿は超美少年だ。夏川がその気になってもおかしくない。それにあんなに自分に自信がなさそうなのに夏川には積極的に話しかけてることを踏まえると、単なる片想いではなく一時は付き合っていたのではないだろうか。少し前に遊貴先輩がそんな話をしていた気もするし、俺はこの推論にかなり自信があった。

「こりゃ一度話を聞いてみるしかねぇな」

「え、キョウちゃんついに会長に興味持った!?」

「そっちじゃねえよ。小山内の方に聞くにきまってんだろ」

「えーー! そんなの全然応援できない」

「お前の応援なんかいらん」

あの会長と何があったとか正直どうでもいいが、参考程度にはなるだろう。それにもしこの先香月とそういう雰囲気になったとき、あいつに痛い思いはさせたくないし経験者の意見も聞いてみたい。

「小山内はもう寮に戻ってんのかな」

「知らないわよ。興味ないもん」

「何だよもー、お前ってほんと好みの野郎の事しか知らねぇよな。この役立たず」

「うっるさいな。そういうキョウちゃんは小山内くんにやたらと絡むよね。好きなの?」

「ばっ…かなこと言うなよ。俺には……」

「……俺には?」

「な、何でもない」

もう少しで香月がいるからとかこの女を喜ばせそうな事を口走ってしまうところだった。これ以上唄子と話しているのは危険かもしれない。

「小山内の部屋ってどこだろ」

「え、今から乗り込むの!? 何か今日変だよ? どうかした?」

「いや暇だから……ちょっと香月にきいてくる」

香月なら教師だし小山内の部屋の番号を調べてくれるだろう。学校が始まるまで待てば確実に会えるが、それまでこうやって悶々と過ごすのも嫌だ。

「ちょっと待ってよ、どのみち男子寮には入れないわよ。キョウちゃん聞いてるー?」

「香月になんとかしてもらうからいい」

携帯を片手に部屋を出ようとする俺を唄子が呼び止めてきたが気にせずそのまま歩き続ける。唄子についてこられる前にと俺は早足で外へと飛び出した。





あの日以来香月とは会っていないので、電話をするのもなんとなく緊張する。談話室まで来た俺が携帯で香月に連絡をとろうとした時、タイミングよく声をかけられた。

「今日子ちゃん、久しぶり〜」

「えっ、トミー先輩!?」

そこにいたのは夏休み前より日焼けしたトミー先輩だった。なんとなくこの人は日に焼けないと思っていたので、健康的な色になった先輩に、最初は誰かわからなかった。

「……焼けましたねー」

「ハワイに行ってたから、日焼け止め塗っても塗っても追い付かなくてさ〜」

「へえ、いいですね。楽しかったですか」

「もう最っっ高!」

「あ、そうスか」

王子様のイメージだったトミー先輩は、ロン毛も相俟って今ではチャラ男みたいな風貌だ。これはファンは泣くんじゃないかと心配になったが、俺は逆にワイルドになっていて悪くないとも思っていた。

「後でおみやげ渡したいんだけど、いつならいいかな。もし良かったら今もってくるけど、用事ある?」

「マジですか。えーっと、今クラスメートの小山内って奴を探してて」

「ああ、小山内希望くん?」

「知ってるんですか」

「彼の部屋、僕と夏の部屋の近くなんだよ。あの子も一人部屋だから」

「何で一人部屋?」

「さあ、生徒の人数の関係じゃないかな。もし良かったらついでに呼んでこようか? 小山内くんが部屋にいればだけど」

「いいんですか!?」

「うん、通り道だし」

「是非お願いします!」

「じゃあちょっとここで待っててね」

まさかのトミー先輩の申し出に深く頭を下げる。随分風貌が変わってしまったが中身は相変わらずだ。先輩にの背中を見送りつつ、俺は小山内にどうやって話を聞き出すか考えていた。


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