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ストレンジ・デイズ



真柴の頭脳プレーにより一気に3人の脱落者が出たので、俺と善と鬼頭は一緒に参加権を得ることができた。もとより善を3位の椅子に座らせて俺が続く予定だったが、善だけが部活に入っていたので自然に善、俺、鬼頭の順となった。優勝する気満々だった鬼頭は少し不満そうにしていたが、ここで俺に勝ちを譲ってアシストに徹した方が男が上がると善に言われてあっさり引いた。

「僕に任せてもらえれば、必ずキョーコさんを優勝させてみせるよ!」

「……変わり身早いな。まあガンバれよ」

「キョーコさんが僕にエールを……!」

こいつに優勝されたりなんかしたら面倒なので俺にしては愛想良く対応しておく。1位と2位の席には優勝候補の早瀬と真柴が座っていて早瀬は3問、真柴は2問正解していた。けれど早瀬はすでに2回間違えておりノーミスの真柴の方にやや分がある状態だ。

『さて、一気に上位3人が脱落となりましたクイズ大会ですが、新たに3人が参戦。なんと全員が一年生、しかもA組です! そして小宮さんは女子でありながら6位という驚異の順位。彼女が今回のダークホースであることは間違いありません。しかしながら小宮さんと鬼頭君は帰宅部、八十島君が入ったことでややサッカー部が有利か!? これは先の読めない展開になってきましたが、どうですか? 副会長』

『……えー、そうですね。しかしすでに早瀬君は3問正解していますから、陸上部が王手をかけているのは間違いありません。しかも帰宅部の小宮さんと鬼頭くんが勝った場合も、その時順位の一番高い人の部に部費は回されますから、早瀬君が残る限り陸上部の有利は変わらないでしょう』

トミーの冷静な分析にちょっとはこっちも応援しろよと泣きたくなる。だが確かに奴の言う通り、早瀬はすでに3問正解している。すでに2問間違えているとはいえ、あと2回パスできるのだ。ここで油断すると一気に持っていかれる。

「大丈夫だキョウ、俺達が勝とう」

「う、うん」

右隣にいる善の励ましに俺は頷く。まるで勝算などないが善が横にいるだけで自信が持てるから不思議だ。

『では解答者が揃ったところで、次の問題にいきたいと思います』

司会者の言葉に今だかつてない程の集中力で耳をそばだてる俺。早瀬があと2問正解すると優勝してしまうのだ。よくわからない問題でもとりあえず手をあげた方がいいだろうか。

『今年この最神学園に赴任し、現在一年A組の副担任である山田先生の名前を答えて下さい』

「……!?」

解答席に座る5人全員が固まって、しばらく誰も何も言えなかった。早瀬と真柴は確実に誰だそれはという顔をしている。

「やったなキョウ! この問題はこっちがもらったぞ!」

キラキラと顔を輝かせてガッツポーズをする善。けれど笑顔の善に俺はひきつった笑みしか返せなかった。

「……山田って、誰だっけ」

「ええっ!? 俺達の副担だろ!?」

そんなこと言ったってわからないものはわからないのだから仕方ない。いや、ちょっと待てよ。うちの副担って香月のことか? あれ、香月って名前なんていうんだっけ……?

「……」

「おいっ! しっかりしろキョウ! こんなサービス問題もうないぞ!」

「はい!」

元気良く手をあげたのは俺ではなく横にいた鬼頭だった。大変いい笑顔で自信満々に挙手している。

『はい、鬼頭君』

「山田和希先生です!」

『正解! これは一年生には簡単すぎる問題でしたね。見事鬼頭君が一問正解しました〜』

普通に答えて周りの歓声に愛想良く手を振る鬼頭。善と俺だけがこいつふざけんなと拳を固めていた。

「菘! 何でお前が答えちゃうんだよ!」

「いやぁ、アピールしたくてつい……」

「何のアピールだよ!」

「俺がつけた名前なのに……なのに……」

言い争う善と鬼頭の間で俺は香月の名前を答えられなかったことにショックを受けていた。客席を見ると端の方で頭を抱え俺以上に落ち込む香月の姿があって、まともに顔を合わせられなかった。


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