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ストレンジ・デイズ




2年のAクラスについた俺は、ずかずかと遠慮もなしに教室に入った。ただでさえ目立つ女子が2年のクラスに現れたので周りが何事かとざわついていたが、俺は気にせずトミーを探した。だが教室には姿が見えない。

「どうしたの? 誰か探してるの?」

きょろきょろしながら困っている俺に、2年の男が話しかけてくる。普段俺に粉をかけてくる品のない男達とは違い紳士的な口調だ。さすがA組の男、と言わざるを得ない。

「トミー先ぱ…いや、とみ……なんだっけな。副会長いますか」

「ハルキ? いや、知らないな。どこ行ったんだろ」

「ハルキなら1年のクラスに行ったんじゃないか? 最近仲良い後輩の子んとこ」

他の先輩の一言に俺はピクリと反応する。仲の良い1年って、もしかしなくてもそれは俺のことだろ。

「あいつノーマルだからって、女の子入ってからはしゃぎすぎ」

「どうやって1年なんかと知り合うんだかね…。気安く話しかけられないだろ」

「ハルキレベルなら向こうから話しかけられるんじゃ……って、小宮さんの前でこの話駄目じゃん!」

「え、なんで」

「お前新聞見てないのかよ! この子と七竈さんがハルキを巡って三角関係ってやつ」

「マジで!?」

なんだか今一番耳にしたくない嫌な名前が聞こえてきた。ひそひそ話してるつもりかもしれないが俺の聴力は余裕で声を拾う。

「じゃあハルキの奴、小宮さんより七竈さんを選んだってこと?」

「マジ? まさかあいつが巨乳好きだったとは…」

「おいっ、トミーが七竈を選んだって、それどういうことだよ!」

聞き逃せない噂話に男達を問い詰める。俺のあまりの気迫に男達ばしどろもどろになっていた。

「何か知ってるなら白状しろ…ってぐぇ!」

奴らを吐かせようとしていた俺の襟が後ろからいきなり捕まれて引っ張られる。床に倒れて咳き込む俺を見下ろしていたのは、俺の大嫌いリストの常に上位にいるバ会長だった。

「なにぎゃーぎゃー騒いでんだよ、貧乳」

「……う、うるさい。お前こそいきなり何すんだ」

そうだった、そもそも俺が普段ここに来ない一番の理由は、風紀の一二三や夏川と鉢合わせする可能性が高いからだ。夏川なんかはA組だし、トミーに会いに来たら必ず絡まれることはわかりきっている。どうせ二人きりでは話せないのだから、ここに来る労力を使うだけ無駄だ。

「今はお前にかまってる暇はねぇ。トミーのところに行って確かめないと……」

「確かめる? あの巨乳女と仲良くやってるかどうかを? その答えならイェスだぜ」

「はあ!?」

その言葉に慌てて起き上がり奴の胸ぐらを掴み上げる。夏川はその手を簡単に払い軽く笑った。

「ハルキ、まどかちゃんに会いに行くって行ってたからな。今頃は仲良くいちゃいちゃしてんだろ」

「なっ…、俺には近寄るなとか言っといて、トミーの奴、マジで許せねぇ……!」

絶対シメる! と教室を飛び出そうとした俺の髪を容赦なく掴む夏川。ヅラが、ヅラがとれたらどうする!!

「なっ、にしやがる!」

「邪魔してやんなよ。お前とは離れて七竈とは仲良くしてるってのは、つまりそういうことだろ?」

「……トミーが俺よりあの女を選んだっていうのか」

この可愛すぎる女子高生の名声を欲しいままにしている俺が、あの胸だけが取り柄の性格悪い女に負けた? そんなことは天地が引っくり返っても有り得ない。

「そんなにショックか? ハルキのこと好きでもないくせに」

「……は?」

「あれ、違うのか?」

夏川のからかうような口調に、俺は何かを言いかけそうになる。しかし肯定も否定も、何も出てはこなかった。

「お前は最初からハルキにまとわりついていた。でもお前は男なんかに簡単に惚れるタイプじゃない」

「……」

それは俺が本当は男だから、ということを言っているのだろうか。こいつにはホモだと思われていても仕方ないと考えていたが、まさか俺の計画がバレそうになっているなんて。

「まるであいつに会いに、ここに来たみたいだ。お前、何を企んでる?」

「何も」

慄然とした態度で間髪入れずに答える。トミーの親友であるこいつに変な入れ知恵されると俺の計画が台無しになるかもしれない。

「俺はトミーを慕ってる。それが恋愛感情かどうかをお前に話す気はない。でも、勝手に違うって決め付けてんじゃねえよ」

そう苦々しげに吐き捨てて、もう話すことはないとばかりに教室から立ち去る。あくまで怒っているふりをしていたが、心の中ではこれ以上こいつと話していてはボロが出ると焦りまくっていた。








「……なぁ、夏川。お前何であんなこと言ったんだよ。可哀想じゃんか」

「そうだよ、ただでさえあの子失恋してんのに、好きじゃないとか言っちゃって。ハルキくらいの美形相手になら一目惚れくらいするだろ」

「いや、そんなの絶対有り得ない」

「「…なんで?」」

「俺にはまったく靡かないような奴が、顔で男を好きになるわけがない」

「…………夏川ってほんと、ナルシストなー」


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