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ストレンジ・デイズ
□大好きお兄ちゃん


俺と七竈の不仲の噂が学校全体に広がっていた昼休み、俺はとても久しぶりに唄子と昼食をとっていた。俺達は持参した弁当箱を持って、食堂の生徒会のやつらからうーんと離れた席に並んで座った。

「ていうか、どうしてキョウちゃんはこんなとこで食べてるの?」

「トミーにしばらく一緒に食べるの控えようって言われた…。また変な噂になったら大変だからって…」

現に生徒会専用の席には新聞部やら親衛隊やらが張り付きとても暑苦しい状態になっている。また修羅場を見ることになるのではないかと期待と不安と好奇心でいっぱいにしているのだ。トミーが俺を遠ざけたのも無理もない。

「それは知ってる。そうじゃなくて、お弁当あるのに何で食堂に来たのかってこと」

「教室なんかで食ったら何か負けたみたいだろ。あの女にとやかく言われたくらいで引っ込まねーぞ、俺は」

「…ふーん。てっきりあたしは、美作君を見に来たのかと思ってたわ」

俺達のすぐ前の席で親衛隊同士で話し合いをしている漢次郎を横目にそんなことを言う唄子。奴の言う通り、ここに座ったのは偶然ではない。夏川親衛隊が食堂で会議をしていると聞いて、せっかくだからとこの席を陣取ったのが唄子にはバレバレだったらしい。肝心の漢次郎は会議が白熱しすぎてすぐ近くに俺がいることに気がついていないが。

「隊長! C組の角谷という男が我らの許可なく夏川さまに近づき、交際を迫った件ですが」

「は? またあいつ?」

「はい。我々の再三の警告を無視し、隙を見て夏川様と接触している模様。…どうしますか」

「どうするも何も、制裁しかないよ。二度と夏川様の前に出られない顔面にしてやる」

「さすが! それでこそ隊長!」

「一生ついていきます!」

「夏川様にまとわりつく虫は僕らで徹底的に排除する。反抗する野郎には容赦しない」

漢次郎は苛ついた様子で有無を言わさぬ冷たい口調で言い切った。他の隊員はそんな漢次郎に尊敬の眼差しを向けて目をキラキラさせている。

「あ〜〜、漢次郎マジで可愛い〜〜」

「顔がね。言ってることは相当ヤバイからね」

唄子の言葉なんて無視して俺は漢次郎を見つめながらにまにましていた。やっぱり漢次郎は怒っている顔が一番可愛い。

「っていうかキョウちゃん! 醤油! 醤油こぼれてる!」

「……へ? ってうおお!」

魚のフライにかけていたつもりのソースは机の上にボタボタとこぼれていた。

「ったくもー! 美作君なんかに見とれてるから……何か拭くものもらってくる。ちょっと待ってて」

唄子がそう言って席を立ってしまい、俺はとりあえず手近な紙ナプキンでこれ以上の醤油の進行を食い止めていた。どうすることもできなくてただ唄子の帰りを待っていた時、一人の男が目に留まった。

普段から特に他人に興味がなく、大抵の人間をスルーできるこの俺でさえそいつには注目せずにはいられなかった。なぜならその男はまず制服を着ておらず、金髪でデカイサングラスをかけて邪魔そうなギターケースを背負っていたのだ。どう見ても教師ではないし、当然保護者でもない。これで目立つなという方がおかしい。当然ながら俺以外の生徒もそのチャラついた男に釘付けだった。

かくいう俺もぼーっとその男を見ていると、そいつと目があってしまった。注目の的だったそいつはなぜか俺を見ると一直線にこちらへ向かってきた。


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