ストレンジ・デイズ
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「お、遅い…!」
次の日の昼休み、七竈との関係を問いただすためにいつもの生徒会専用の席でトミーを待っていた俺は、珍しく大遅刻している奴に爆発寸前だった。普段なら俺が来た時にはもうすでに何かしらもぐもぐしているのが常なのに、今日はいつまでたっても来ないので俺は先に食べ始めていた。
「どこで何やってんだよぉ…いくら何でも遅すぎだろ…」
「うるせー、いいから黙って食え」
「……」
やきもきする俺にクソ会長のイラついた声が刺さる。ロコモコ丼とか似合わないもん食ってる夏川にもだんだんイライラしてきた。
「俺が気に入らないのはなぁ、何かお前と二人きりで食ってるみたいになってる事なんだよ! 漢次郎はどこ行った!?」
「親衛隊仲間と会議をかねて昼食だとよ。今日はこねぇ」
「チクショー何でこんな時に!」
愛しの漢次郎もトミーもいないのにここにいる意味がはたしてあるのか。でももうすぐトミーが来るかもしれないし、ここは我慢我慢…。
「トミーの奴、七竈ナントカなんかとどうして仲良いわけ? お前なんか知らねぇ?」
「さぁな、でも最近よく一緒にいるの見るぜ。教室にもたまに来て二人でこそこそ話してるし」
「ぬぁ!?」
「別に珍しくもねぇよ。ハルキは友達多いから」
「女の友達は俺だけのはずだろ!?」
男だらけの学校でライバルなんていないと油断していたのに、まさかあんな巨乳女に先を越されるなんて。このままあいつがトミーの彼女になんかなったら怜俐に顔向けできない。
「トミーって、胸のでかい女が好みなのかな…」
「知らねー、そんな話しねー」
「ほんっとに役に立たねぇ野郎だ」
思ったことをそのまま口に出してしまったその時、視線の端にトミーを見つけた。気分が浮上したのもつかの間、その横にあのデカパイ女を見つけ顔が引きつった。
「なんだよアレ! 何であいつらが一緒に!」
「おい食ってんだから引っ張んなって、おい」
夏川の襟首掴んでぶんぶん振り回して叫んでいると、トミーがのんきにこっちに歩いてきた。あの女と一緒に。
「遅くなってごめんね。まどかちゃんと話し込んじゃって」
まどかちゃんとやらは俺を一瞥して、またトミーににっこり微笑んだ。奴の彼女ヅラに思わず白目を向いてしまう。
「食うことしか考えてねぇお前が昼食に遅れるなんて珍しいな」
「いやー、まどかちゃんが手作りのクッキーたくさんくれて、それがまた美味しくて美味しくて、食べてたらつい」
「やだーハルキ先輩ったら、褒めたって何も出ませんよ」
「でも、ほんとのことだもん」
我慢の限界だった俺はトミーに用意していた弁当を派手に音をたてて机に置く。ぎりりと奥歯を噛み締め二人を睨んだ。
「俺の弁当の方が、ぜってー百倍うまいっすから…!」
キャラ作りも忘れて威嚇する俺に気づきもせずトミーは俺の弁当に飛び付いた。
「わあ、ありがとう。まどかちゃん、今日子ちゃんのお弁当もとっても美味しいんだよ」
「そう、俺はお前が現れるずっと前からトミーに作ってやってんだよ…、ぽっと出のお前に邪魔される覚えはねぇ…!」
「邪魔? いったい何のことかしら」
七竈なんとかのしれっとした態度に俺はさらに激昂した。
「何でわざわざトミーなんだよ! 他にも顔のいい奴ならいくらでもいるだろ!? 例えばこいつとか!」
「ふぁ?」
ハンバーグを頬張っていた夏川を指差して全力で勧めようとしたが、顔以外特に褒めるところがなかったのでそれ以上何も言えなかった。奴は巻き込むんじゃねーよと言わんばかりの目で俺を睨んできた。
「別に、私が誰と親しくしようがあなたに関係ないでしょう? あなたこそファンも多い様だし、そこの会長さんに乗り換えたらどうかしら」
「ああ?」
「とにかく、私はここで失礼しますわ。生徒会専用の席に図々しく居座れるほど、私図々しくありませんの」
奴は捨て台詞を吐いて、トミーに目礼してからさっとその場を離れる。もっと文句言ってやりたかったが、さすがに周りの視線が痛かったので我慢した。
「何イライラしてんだよお前らしくねぇ。あんなのほっときゃいーだろ。なあ、ハルキ」
「わあ、今日は唐揚げ入ってる〜〜」
「お前はもうちょっと気にしろよ……」
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