[携帯モード] [URL送信]

ストレンジ・デイズ





「おはようございます、キョウ様、唄子さん」

「……」


次の日の朝、唄子と登校していると待ちかまえていたかのような香月と会った。にっこり笑って挨拶されたが、何となく嫌な予感がした。

「香月さんおはようございます〜。何かあったんですか?」

「…ええ、キョウ様に少し確認したいことがありまして」

うわー、なに突っ込んでんだよ唄子の奴。ほんと余計なことしか言わねえ奴だな。

「キョウ様、少し時間よろしいですか?」

逃げようとスタートダッシュの構えをとっていた俺の襟首を掴み上げる香月。そして俺達に持っていた紙を広げて突きつけた。

「これを見てください」

香月が目の前に広げて見せたのは校内新聞だった。そこの見出しにデカデカと書かれていた文字を唄子が読み上げる。

「『激突! 今日子様vsまどか様! 生徒会副会長、ハルキ様を巡ってついに対決!? 衝撃の泥沼三角関係の実態とは!』」

「な、なんじゃそりゃあ」

とんでもない見出しについ間抜けな反応をしてしまう。しかも俺とあの女が食堂でもめてた時の写真がばっちり載っているのだ。いったいいつ、誰が撮ったんだこんなもん。

「聞きたいのはこっちですよ、これは本当のことなんですか?」

香月がなぜそんなにも咎めるような口調で問い詰めてくるのかはわからないが、俺の方こそキレてやりたかった。確かにあの時周りに数人のギャラリーはいたが、昨日の今日でもう新聞にのるなんて。しかもこんなにくだらない内容で。

「『比べる意味がわからない──。小宮今日子親衛隊代表、1年A組柊芽々はこう語る。我らが今日子お姉様があのようなごく普通の一般人と比べられる事がまず理解し難い。絶世の美女である今日子お姉様の美しさは、凡人がいくら取り繕おうとも到底たどり着けるものではなく、またその媚を売らぬ姿勢が彼女をより神聖で高貴なものにしてくれている──』なかなかいいじゃない、これ」

「唄子、そのゴミ文字読み上げる必要ある…?」

何勝手にインタビューとか受けてんだあいつ…と呆れていると、香月が俺を無表情で見下ろしていた。これはヤバい、完全に怒っていらっしゃる。

「あれだけ必要以上に目立たず、ひっそりと過ごすことと注意しておいたのに…!」

「お、俺が悪いんじゃねぇ、唄子もなんとか言ってくれよ」

「芽々ちゃんが好戦的なだけじゃなく、キョウちゃんと七竈さんの親衛隊同士のいざこざも多いみたいですよ。だからこんな大きな記事になっているんでしょう」

冷静に分析してる場合か。こいつも七竈のことは乳デカ性悪女と裏で言ってるくせに、香月の前では完璧にいい子ちゃんだ。

「まさかとは思いますがキョウ様、女の子に喧嘩売ったんじゃないでしょうね」

「うっ」

「何度も言っておりますが、女性には優しくしなくてはいけません。喧嘩なんてもっての他です。キョウ様は本当は男なんですから」

小声で男というのを強調してくるが、俺にはよくわからない。暴力を振るったわけでもあるまいし、女だからと言ってこちらがなぜ我慢しなければならないのか。それこそ男女差別だ。

「向こうは俺が女だと思ってなめた口きいてんだから、こっちだって女として手加減なしで言い返すしかねぇだろ。それに、甘い顔してるうちにトミーとられたら馬鹿みてぇじゃねぇか」

「キョウ様…」

「あの男は俺の獲物だ。誰にもわたさねぇよ」

新聞を突き返し、強気の態度で香月を睨み返す。心配でたまらない、という顔をされたが、それ以上何も言われないうちに香月から逃げた。

「ひゅ〜〜キョウちゃんかっこいい! あんな女さっさとやっちゃって!」

「香月の前でそれ言えよ。つーかお前のがよっぽどタチ悪いんだけど……」


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!