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ストレンジ・デイズ




八十島君から手がかりが得られない以上、俺が彼を徹底的に見張るしかない。風紀委員の担当教員として、俺は学園の見回りをするふりをしながらこっそり鬼頭君を観察することにした。




「さあ、僕と一緒に帰ろうマイハニー!」

「うっぜぇぇえ! 俺は今から勉強すんだよあっち行け!」

「本当に? なら僕も一緒に――」

「てめーが来るなら帰るっつーの!」

「ぐはッ!!」


相変わらず響介様に容赦なく蹴られまくっている鬼頭君に、俺は立場も忘れて同情してしまう。我が主ながら酷すぎる仕打ちだ。

「お前は、なんで、そんなに、うざいんだよ! クソが!」

「あぁ…、キョーコさん、もっと……」

「ひぃぃい!」

腹を思い切り踏みつけられながら恍惚の表情を浮かべる鬼頭君に、それを見て気持ち悪がる響介様。……どうしよう、鬼頭君、想像以上の変態だ。

「唄子〜、こいつなんとかしてくれよぉ〜」

「学園のドM王子×強気平凡だなんて……なにこの新ジャンル…。私はどう萌えればいいっていうの…?」

「うるせぇこの役立たず! ……善! お前こいつと仲良いんだろ? なんとかしてくれよ!」

「悪い、今から部活なんだ。じゃあなキョウ」

「この裏切り者ー!」

さっさと部活へ行ってしまう八十島君を涙目になりながら詰る響介様。そしてその腰に性懲りもなく張り付き、すぐさま足蹴にされる鬼頭君。かなりすごい光景だがクラスメート達は慣れているのか殆どの生徒が普通に下校していた。何人か悔しそうに響介様を見ている生徒がいたが。

響介様は一通り鬼頭君をぼっこぼこにした後、死にそうな顔になりながら教室から出ていった。蹴られれば蹴られる程喜ぶ鬼頭君に対処法がなく、かなりストレスがたまっているらしい。

鬼頭君は響介様にズタボロにされたものの復活は異常に早く、すぐになに食わぬ顔をして下校していった。俺は彼が放課後何をしているのか突き止めるために、こっそり後をつけた。

彼は鞄を持ってはいながら昇降口とはまったく違う方向へと歩いていく。……どうも怪しい。部活にも入っていない彼が、いったい何をしているというのか。

相当な人気者なのか、歩くたびに歓声が湧き、そしてその1人1人に笑顔で答える鬼頭君。ぶっちゃけこんな有名人がこっそり裏で男を襲うなんてかなり難しいと思うのだが、いったいどうやっているのだろうか。

「……って、あれ?」

少し考え事をしている間に、鬼頭君の姿を見失ってしまった。あの眩い金髪と高身長の彼ならすぐに見つかるはず、と慌てて辺りを探したがどこにもいない。

「…くそ、まかれたか……」

「何がですか?」

「うっわ!」

突然後ろから声をかけられて、俺は柄にもなく飛び上がる程驚いた。俺の後ろに立っていたのはさっきまで追っていたはずの鬼頭君だった。

「な、なんで…」

「何をなさってるんですか、先生」

なんだかしらんが、凄く怖い。笑顔なのが逆に怖い。というかいつのまに後ろにきたんだ。

「……あの、資料室に行こうと思いまして。次の実験で使う器材を……」

「そうなんですか。でも、資料室は真逆ですよ?」

「あー……迷った、みたい、ですね。赴任してきたばかりなので」

「なら、案内しましょうか」

「えっ」

「僕、ここに来たばっかですが、もうだいたい覚えましたから」

……これは、言葉通り受け取ってもいい申し出なのだろうか。なにか裏がある? それともただの好意? もしそうならさっきまで女子高生に足蹴りされていた変態とは思えないくらい普通のいい子だ。

「じゃ、じゃあお願いします…」

「はい、まかせてください」

動揺しまくってしまった俺だが、これはいい機会かもしれない。彼から直接話を聞いて、正体を暴く手掛かりにすればいい。これがもし何かの企みがあってのことなら、受けてたつまでだ。


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