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ストレンジ・デイズ




とりあえず、黙ってはいそうですかと納得するのも悔しいので、ダメ元で駄々をこねてみることにした。もしかすると俺の涙に耐えられずなんとかルールを曲げてくれるかもしれない。

「うわぁぁあんトミー先輩っ、そんなの酷いです! 今日子、先輩のために頑張ったのに!」

「ごめんねほんとに、僕がもっとしっかりしていれば……」

「わぁぁあん!」

嘘泣き丸出しではあったが、そんなことは気にしない。俺は八つ当たりとばかりにトミーの前で泣き伏してやった。トミーはどうしようかとオロオロしていたが、夏川は完全に無視して食事を続けている。

「ちょっと、キョウちゃん! 恥ずかしいからやめてよ!」

「うっせぇ唄子! せっかくトミーと一緒にいられるチャンスだったんだぞ! なのに、なのに…っ」

「だからって富里先輩にもどうしようもないでしょ! 周りに当たらないの!」

「う〜…」

この調子じゃいつこの生活からおさらばできるかわかったものじゃない。ぐずる俺に変態鬼頭が近づいてきて俺の肩をちょんとつついた。

「ねえ、キョーコさん」

「なんだよ!」

「キョーコさんって、そこの副会長さんが好きなの?」

「え」

鬼頭の質問にしばし固まる俺。今更そこに突っ込んでくる奴がいるなんて。だがトミー本人がいる前で仮に嘘でも好きとか言えない。だいたいこっちが好きと言って惚れさせても意味がないのだ。向こうが俺を好きになって告白させ振ってこそ復讐なのだから。

「ばっ…! 好きとか、そういうんじゃねーよ! ただ先輩として慕ってるだけで…」

「……」

真っ赤になりながら否定してみるが、これじゃ好きですと言ってるようなものだ。いやほんとは好きじゃないけど。

「そうか、そうなんだねキョーコさん」

「な、何がだ」

「その男がいるからキョーコさんは……」

案の定鬼頭もすっかり勘違いしてしまったらしい。なぜか敵対心バリバリでトミーを睨み付けている。そしてもぐもぐとハンバーグを食べ出していたトミーの目の前で仁王立ちになり、どこからか出したシルクの手袋を投げつけた。

「副会長、僕と決闘してもらおう! キョーコさんを賭けて!」

「でえぇえ!?」

びっくりしすぎて変な叫び声が出た。トミーは、「は?」というとぼけつつも俺にとっては容赦のない顔をしているし、これからのトミーの発言次第では俺の心が燃え尽きてしまう。頼むからもうそれ以上はやめてくれ。

「おい何言ってんだよ! てめぇとトミーが決闘って何だ!」

「ルールは簡単、時間無制限で先に立っていられなくなった方の負けだ。男と男の真剣勝負、勝った方がキョーコさんを手に入れる。文句はないだろう」

「勝手に話進めてんじゃねぇ! 凛々しい顔すんな! つかそれ限りなくアウトだからぁぁあ!」

こいつとトミーの決闘など猫パンチにしかならない気がするが、やはりこれでトミーが怪我でもすれば俺の株は大暴落。いくらトミーでももう口をきいてもらえなくなるかもしれない。そしてもし鬼頭が勝ったりなんかすれば、奴はもっと調子づいてしまう。最悪だ。

なんとかして止めなければ、と思っていた俺だが、俺が動くより先にトミーの前に立ちふさがった奴がいた。今まで無関心そうにそっぽを向いていたはずの夏川だ。

「悪ぃな1年。その勝負、ちょっと待ってもらおうか」

「なに?」

「俺は生徒会長、夏川夏。ハルキの幼馴染みだ。そいつと闘いたいなら、まずは俺を倒してもらおう」

無駄に格好つけた姿勢で好戦的な視線を寄越してくる夏川。決めすぎて下手な三文芝居みたいになっているが、ナイスだ夏川。

「ふっ、望むところだ」

なぜかノリノリの鬼頭は白い手袋を拾い上げ改めて夏川に投げつけた。周りの生徒も事態に気づき始め、ものすごい数の野次馬が集まっている。俺の目の前では訳のわからないうちに、夏川対鬼頭というとんでもないことになってしまっていた。


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