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ストレンジ・デイズ





唄子と共に人の流れを追うと人だかりに行き着き、その真ん中で新聞部らしき生徒が「号外ー!」と叫びながら新聞をばらまいていた。もう教師には内緒もへったくれもない。

皆が新聞に群がっているためなかなか近づくことができない。どうしようかと思っていると唄子が人だかりの中に突進していった。

「うぉらぁ!」

宙に舞う紙を素早くキャッチし、唄子はガッツポーズをしながら戻ってくる。お前のそのポテンシャルの高さ、俺はちょっと尊敬しているぞ。

「えーと順位は、なになに……よっしゃあああ! とったぁあ!」

「へ、何だよ。ちょ見せろって。1位とれたのか?」

「うん! 2年連続、夏川先輩が抱かれたい男1位とったよ!」

「んなこと聞いてねぇよ。俺は!? 俺は何位だったんだ!?」

「あー、キョウちゃんも抱きたいランキング1位だったよ。良かったねー」

「よっしゃぁ! ってお前何でそんな軽いんだよ」

唄子の冷めた反応にちょっとショックを受ける。お前だって俺の1位を誰よりも望んでたんじゃないのか。俺はお前の理想の総受けだったんじゃないのか。

「えー、だってキョウちゃんの1位なんて決定事項だったじゃん。速報の時点で2位と圧倒的に差つけてたし」

「そりゃぁ…そだけど」

「その点夏川先輩は荒木先輩と接戦だったのよ。結局は、結構な差をつけて1位を取っていらっしゃるみたいだけど」

「あっそ」

唄子は新聞を隅から隅までなめ回すように見ていたが、自分の順位さえわかれば良かった俺は特に興味がなかった。自分の順位がわかった俺にはなさなければならないことがあるのだ。

「よし、この新聞ひっさげて今から食堂に行くぞ。この時間なら生徒会の奴ら飯食ってんだろ」

「会長におめでとうでも言いに行くの?」

「馬鹿が。俺の順位を見せつけて生徒会の補佐的なアレに入れてもらうんだよ」

「あぁ、そうだったわね! きゃー会長が間近で見られるなんてドキドキするー」

「お前も来んのか。いや、別にいいけど」

そうと決まれば善は急げ。拳に新聞を握りしめ、騒いでいる生徒達を残し、俺と唄子は早足で食堂へと向かった。











食堂の方もランキングの結果が伝わっているようで、人は比較的少ないにも関わらずかなり騒がしかった。俺の目当ての人物、トミーはいつも通り生徒会専用スペースに座って、天丼とハンバーグと八宝菜とカレーパンを食べていた。隣には当然のことながらバ会長もいて、のんきにハヤシライスなんかを食べている。

「トミーせんぱぁ〜い! お久しぶりでーすっ」

小宮今日子精一杯のぶりっこをしながらトミーの元へ駆け寄る俺。トミーは俺に気づくとにこにこと笑って出迎えてくれた。

「今日子ちゃん久しぶり。また一緒に食べられるようになったの?」

「はっ、今日はあの変態金髪野郎とは一緒じゃねえのかよ。あんなに仲良しだったじゃねぇか」

余計なことを言う夏川夏をぎろりと睨み付ける俺。こいつ、久しぶりに口をきいたと思ったらろくなこと言わねぇな。

「今日は友達も一緒なんだね。こんにちは」

トミーが俺の後ろにいた唄子に声をかける。奴は顔を真っ赤にして頭をぺこっと下げた。どこの乙女だオイ。

「トミー先輩! これ見てください! 今日子、1位になったんです!」

俺はトミーの奴に持っていた新聞を突きつける。新聞を受け取ったトミーはそれを見てまたまたにこっと微笑んだ。

「おめでとう、さすが今日子ちゃん」

「どもっす。ってことで、これで今日子を生徒会補佐に入れてくれますよね!」

「へ?」

「へ?じゃないっすよ。言ってたじゃないですか。ランキング上位者を生徒会に入れてくれるって……」

「その話、ちょっと待ったぁぁ!」

目を輝かせてトミーに詰め寄る俺にまさかの待ったがかかる。後ろを振り返った先にいたのは、俺の可愛い可愛い漢次郎とその他大勢の夏川ファンの奴らだった。


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あきゅろす。
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