ストレンジ・デイズ
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「芽々ちゃん、正式な結果が出るのはいつぐらいになるか知ってる?」
「多分テスト明けになるんじゃないかなー。集計するのも大変だしね」
「へぇ〜、楽しみー!」
きゃっきゃっと騒ぐ女どもに俺はため息をつきつつも、この異様なランキングが女にも受け入れられていることに驚いていた。いや、単に唄子と柊が異常なだけなのか。
「あ、そうだお姉様。コメントも色々載ってますよ。これまだ発行してないので、部長による検閲前の未完成記事らしいんですけど、あんずちゃんから奪ってきちゃいました。お姉様に早くおしえて差し上げたくって」
「別にいらねーよ。コメントとか」
「そんなこと言わずに。これもお姉様の人気の賜物なんですから。いくつか読み上げますね。えー、『性格はえげつないけど、顔が好みなので入れました』『顔が好きです』『今日子様マジで顔美人』」
「顔しかねぇじゃねえか」
「いや、事実顔しかないから」
余計な一言を口にした唄子をギロリと睨み付ける。奴はそれを気にもとめずぱくぱくとカレーを食べ始めていた。
「他には『さすがに授業中いびきかいて寝てたのには引きましたが、顔が可愛いので何とか許せます』や、『黙ってれば理想です』とかがあります」
「俺のこと普通に嫌いっぽいコメントだなおい」
「『ちょっとがさつだけど、ほんとは優しいキョウに一票。生徒会補佐頑張れよ。善』」
「名前書いてんなよ! しかも普通にいいコメント!」
「良かったね、キョウちゃん」
こっぱずかしい奴、と思いつつ今までのコメントがひどかっただけにちょっと感動した。さすが善、さすが俺の友達。
「芽々ちゃん、他の順位はどうなってるの?」
「えーっとね、抱かれたいランキングは僅差で八十島君が1位で次点に鬼頭菘がいるみたい。まあ、予想通りの二人の接戦ってとこかな」
紙を見ながら柊がペラペラとその内容を読み上げる。やはり善が1位か。しかし投票した大半の生徒が男だと思うとそう羨ましくもない。
「で、2年の抱かれたいランキングは、1位が生徒会長の夏川夏先輩」
「げぇ」
「お姉様に付きまとうゴミクズですね」
「ちょぉっと芽々ちゃん! 周りに聞こえちゃうから!」
唄子が慌てて柊を止めに入る。しかし柊はいけしゃあしゃあと話を続けた。
「で、2位がF組の荒木実美先輩です。……誰ですかね?」
「さあ。俺も知らねぇ」
「キョウちゃんの馬鹿! 荒木先輩はラブレターくれた人じゃない! あたしまだ大事にとってあるんだからね!」
「マジかよ早く捨てろよ。てかラブレターとかもらってたって、さすがに会ったこともない奴は覚えてねぇよ」
荒木という名字、なんとなく聞いたこともある気がするがきっと気のせいだろう。ありがちな名前だし。
「ちなみに2年の抱きたいランキング1は美作先輩、またまた僅差で2位が平先輩って書いてあります」
「ちなみに美作先輩はこれをとれば2年連続1位なんだよ、キョウちゃん」
「へー、さっすが漢次郎。ま、俺も入れてやったしな」
「え゙、なんで入れたの」
「だってこの学校で一番可愛いじゃん」
なぜかちょっと引いた目で俺を見てくる唄子。こいつにだけはそんな目で見てもらいたくない。
「……ち、ちなみに、抱かれたい方は誰に投票したの?」
「無回答、白紙のまま出してやった」
「えー、つまんなーい!」
その時の唄子の落胆っぷりといったらまるで小さい子供だった。ぶっちゃけ2年で好感持てる奴なんか漢次郎以外にいない。
「じゃあ1年の部門はどうなのよ。抱きたい抱かれたい、それぞれ誰に投票したわけ?」
「もちろん、自分にだ」
「うわ、最低」
「1位狙ってんだから当たり前だろ。抱かれたい方には、ちゃんと善の名前書いたぞ」
「キョウちゃんそれ問題発言」
「あいつは俺の救世主だ。俺はあいつになら抱かれてもかまわない」
「私的にはめちゃめちゃ美味しいんだけどこの学校じゃ洒落にならないからそういうことあんまり言わない方がいいよ! だいたいキョウちゃん女だし!」
「いやーっ、八十島君といえどお姉様は絶対にわたせません!」
慌てる唄子となぜか悔しそうに地団駄を踏む柊。いい加減食事をとりたかった俺は、騒ぐ奴らを無視してオムライスを食べることに集中することにした。
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