ストレンジ・デイズ
□迷惑な同室者
地図によると女子寮と男子寮は一応別ではあるものの、真ん中でつながっていて二世帯住宅のような構造になっているらしい。
こんな密接な造り色々とまずいんじゃないか? と首をひねったが、夜になるとお互いの出入り口には鍵がかかり完全に遮断されるらしい。パンフレットの横っちょに書いてあった。
分厚いドアを恐る恐る開けると、そこはホテルのロビーのような場所だった。きょろきょろとよく観察してみると、右に『女子寮、寮監室』と書かれた受付のような場所があった。
「すみませーん。誰かいませんかー」
俺が声をかけると、奥の方から優しい目をした40代ぐらいのおばさんが出てくる。
「あら、まあまあまあ」
俺を見たおばさんの第一声がそれだった。
「あなたが家の事情でいったん家に戻った外部生?」
「あ、はい。小宮です」
そういうことになってるのか。まあ適当に話をあわせとこう。
「小宮さんねー、まあ可愛らしーお人形さんみたいねー」
「………どうも」
なんかバカにされてる気がするが、悪気はなさそうなので流しといた。
「小宮さんの部屋は201、階段上がってすぐのとこよ。これが鍵」
さんざん俺の全身を観察しまくったおばさんは、笑顔で金色に光る2枚のカードを取り出した。
「カード?」
「そう。カードキーなの。こっちは予備。なくすと再発行にお金かかっちゃうから気をつけてね」
「…はい」
話の間もずっと俺の顔をにこにこしながら見つめるおばさん。居心地が悪い。
「そういえば、ついさっきアナタのルームメートがここ通ったわよ。たぶんコンビニに行ったんじゃないかしら」
「…はあ」
ん? ちょっと待てよ。おかしくないか。ルームメート? それって…。
「って俺一人部屋じゃないんすか?!」
「え? ええ…うちは基本的に2人部屋だもの。知らなかった?」
待て待て待て!! と、ということは…
「その同室者って女ですよね!?」
「…? 当たり前じゃない」
う、嘘だろぉおお!!? 女!? 女と2人部屋!? 聞いてねえぞそんなん! いや待てよ、さっき香月が同室者がどうのとか言ってたような…。ああクソ、あのとき流したりしないで真面目にきいておけば良かった!
「やだ大丈夫よ小宮さん。同室の女の子、すごくいい子そうだから」
何を勘違いしたのか励まされてしまった。いい子そうっつったって男と同室は嫌だろう。バレたらどうする。詐欺、つまり犯罪だ。告訴されるに違いない。
「小宮さん? どうしたの? 頭痛いならお医者さん呼ぼうか?」
「いや…、いいッス…」
おばさんの気づかいむなしく、俺はただ呆然とその場に立っていることしか出来なかった。
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