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ストレンジ・デイズ




変態マゾ男から逃げ出してきた俺は、教室にいた唄子に助けを求めるべく泣きついた。俺の慌てぶりに最初は驚いてていた唄子だったが、事情を話せばやれやれといった表情でわざとらしいため息をつかれる。おまけに蔑むような視線をよこされ偉そうに説教までされた。

「あたしに内緒で行動するからよ。自業自得だわ。これに懲りたら二度と勝手に女つくろうなんて考えないことね」

「うう…、しょうがないだろ。ちょっとぐらい夢見たっていいじゃねえか」

落胆する俺とは対照的ににやにやと嬉しそうに笑う唄子。何を考えているかわかるだけに、俺の気持ちはさらに落ちていく。

「でもあの鬼頭君まで虜にしちゃうなんてね〜。キョウちゃんの魔性っぷりが健在で良かったわ」

「なんだよ、お前やっぱりあのマゾ男知ってんの?」

「もちろん! 彼は中等部の頃から有名な我が最神学園の王子様だもの。マゾってのは初耳だけど。キョウちゃん限定なのかしら」

「そんな限定いらねぇよ。すずなとかいうからてっきり女かと。まさか男だったとはなぁ……」

「ちなみに“すずな”はこういう字を書くのよ。春の七草の1つ」

唄子は自分のシャーペンでノートになにやら書き込む。覗き込むとそこには大きく“菘”という文字が。

「……読めない」

「きっとそう思って平仮名にしてくれたのよ。鬼頭君やっさし〜」

「いや、どちらかというと馬鹿にされてるだろ」

現に読めなかったのだから怒りを覚えるのはお門違いかもしれないが、アホ前提で手紙を出してきやがったのには腹が立つ。手紙にちゃんと鬼頭菘って書いてあったら俺は絶対行かなかったのに。

「ちなみに鬼頭君って私達と同じクラスだと思うんだけど」

「は!? いや絶対いなかったぞ。いくら俺がクラスメートの顔覚えてないからって、あんな目立つ奴がいたら覚えてるっつーの」

「いないのは当然よ。だって彼、今まで留学してたんだもん」

「留学……?」

「鬼頭君、お母様がドイツ人なんですって。だからしょっちゅう向こうに行ってるみたい。彼、頭がすごくいいからA組入りは確実だし」

「……へー」

俺としてはそんなことよりあいつが同学年だったことの方が驚きなのだが。ていうか同じクラスってマジで? ……うわ、一気に転校したくなってきた。

「にしてもあの鬼頭君が帰ってるなんて、またしても波乱の予感がするわ…! もうすぐ最神学園恒例のアレもあるわけだし」

「アレ?」

アレの見当がまるでつかない俺が首を傾げると唄子が得意気な顔をして指を立てる。こいつがこんな嬉しそうな顔をしているのは、たいていろくでもないことを考えている時だ。

「アレっていえばアレしかないでしょ。王道BL学園にお約束の、全校生徒を巻き込んだ“抱きたい抱かれたいランキング”よ」


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あきゅろす。
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