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ストレンジ・デイズ
■純愛美少年



その日、俺は風紀委員の活動の一環で校内の見回りをしていた。あの一二三君の一件以来、デフ絡みの大きな事件は起きていない。F組の荒木達も反省したのか懲りたのか、相変わらず授業には出ていない日もあったが風紀と奴らの間に特に変わったことはなかった。

「よし、南校舎は異常なしと…」

見回りを続ける俺が北校舎に移動するため中庭を突っ切っていたとき、近くの芝生から数人の声が聞こえてきた。そっと近づいてみると茂みの裏に俺のよく知る顔があった。


「なーなー実美ー。次の授業どうするんー?」

「ああ? 次誰だよ」

「英語のハゲ井」

「ああ、あのハゲか。ダルいからパス」

芝生の上でだらけていたのはつい先日風紀ともめたばかりの荒木実美、上原誉、余目竜二、樽岸遊貴のデフ4人組だった。相変わらず荒木はどこの舞台俳優だといいたくなるような絵になる姿で、気だるそうに芝生の上に寝そべっている。できることならばもう彼らともめ事は起こしたくなかったが、目の前で堂々とサボると言われてしまったのだから無視はできない。ここはガツンと注意してやらねば。

「なんでF組にはしょぼいハゲかメタボ教師しかこーへんねやろなぁ。ほんまつまらんわ」

「誉さん、来て欲しい奴でもいるんすか?」

「いや俺やなくて堤の野郎がな、藤堂ヤりたいっていうから。でも藤堂こっちの校舎こーへんし、チャンスないやん」

「堤って藤堂狙いだったんすか!? 趣味悪いっすねー。なんかアイツかっこつけすぎてて俺は無理っす」

「アホか竜二! ガキの恋愛ちゃうねんぞ。そういう奴を無理やり、ってのがええんやんけ! なァ、実美も藤堂アリやんな?」

「ああ」

「ええっ〜、じゃあ荒木さん的にはどういうのがナシなんすか。新名とかいけます?」

「ギリだな」

「風紀の山田は?」

「絶対無理」


「ちょっと! あなたたち!」

「「うわああっ!!」」

割り込むチャンスをうかがっていた俺はあまりに下品な会話に我慢できなくなり、デフ4人組の前に飛び出す。全員がかなり驚いたようで余目君などはずっこけてしまっていた。

「黙って聞いてれば好き勝手なことを! あなたたちは教師をなんだと思ってるんですか!」

「山チャン!」

一番立ち直りが早かった上原君に変なあだ名で呼ばれた。性格とはかけ離れた可愛らしい2つの目が俺を見ている。

「盗み聞きとかやめてや! ビビるやん。てか何怒ってんの? 大丈夫、実美的にはナシやけど、山チャン俺的には全然アリやから!」

「そんなこといってるんじゃないですよ! 教師をどういう目で見てるんだって訊いてるんです!」

「ええやん、ストライクゾーンは広い方が。なあ、竜二も遊貴もそう思うやんなぁ?」

余目君と樽岸君はショックから抜けきれていないのか上原君の問いにコクコクと頷きながら俺を見ている。だが2人はまだいい方で、荒木などは俺から一瞬も目をそらさず、いつでも攻撃できるよう身構えているみたいだった。

「ついこの間あんなに厳しく指導したのに、こんな調子では…もっともっと厳しくする必要があるようですね」

指の関節をポキポキとならす俺の言葉に余目君と樽岸君がヒッと息を飲む。俺は地面を指差し、声高らかに命令した。

「今すぐ全員、その場に正座なさい!」


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