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ストレンジ・デイズ





「おかえりキョウちゃーん!」

勉強が終わり部屋に戻って早々、唄子の晴れやかな笑顔に出迎えられる。こういうときのコイツは何かたくらんでる可能性が高い。

「今日の勉強どうだった!? 八十島くんと楽しいハプニングはあった?」

「ねーよ。つかお前それしか言うことねぇのかよ」

「他にもあるわよ! 数学、ちょっとは勉強できた?」

「まぁ…ちょっとは」

あのじいさんの教え方は、俺としてはかなりわかりやすかった。なにより、まったく数学を理解できていない俺を一度も責めなかったのだ。俺にとってはそれが何よりも嬉しかった。

「そっか、なら良かった。きっとこれで数学はバッチリね」

「バッチリではないだろうけどな。まあ欠点とらねえようには頑張る」

「うんうん」

「ただ問題は日本史とか世界史なんだよな…」

数学は校長、現国を藤堂、生物等を香月に教えてもらうつもりだが、それ以外の科目をどうするべきか。各教科の担当教師に頼んでみるというのも手だか、それほどのやる気もでてこない。

「日本史とか、自分で勉強すればいいじゃない」

「できねーから悩んでんだよ。どっかに、日本史得意そうな奴…」

一応考えてはみるものの、この学園での知り合いが少なすぎて誰も浮かばない。制服を着替えながら頭の中で悩んでいると、椅子に座りながらこちらを見上げる唄子とばっちり目があってしまった。

「…なぁ、唄子」

「んー?」

「お前、得意科目は?」

「あたし? 一番得意ってか好きなのは、日本史」

「…お、お前、だったら俺におしえろよ! 何で知らん振りしてんだよ!」

脱いだ制服を勢い良く投げ捨て唄子に怒鳴る。こいつ、俺がこんなに悩んでいるのに助ける気はなかったのか。

「何言ってんのキョウちゃん。日本史は得意な人に教えてもらったって駄目に決まってるでしょ」

「はあ!? じゃあ誰に聞くんだよ!」

「日本史不得意だけど点数とってる人。もとから日本史好きだと、勉強しなくても内容覚えちゃうから」

「え、そーなの?」

「少なくともあたしはね」

それただ単に俺に教えるのがめんどくさいから嘘ついてんじゃねえだろうな、と思わないこともなかったが、唄子の話も一理あるので俺は大人しく引き下がった。となると、俺に残された道は限られてくる。

「しゃあねえ、1回八十島に頼んでみるか」

「八十島君!?」

俺の人選に、やけにオーバーに驚く唄子。てっきり喜ぶものだとばかり思っていたのだが。

「なんだよお前、その反応。俺、友達といえば漢次郎と八十島しかいねぇもん」

「友達!? キョウちゃんいつのまに八十島君と友達に!?」

「いつのまにって…俺の勝手だろうが。それに、八十島意外といい奴だし…」

うちの可愛い怜悧をほめてくれたこと、俺の妹への純粋な愛を理解してくれたこと。以上を踏まえて八十島はいい奴だ。向こうも俺を友達と思っているはず。…多分。

「嘘…、キョウちゃんが他人をほめてる…」

「失礼な奴だな。つーかお前なんで喜んでねえの?」

今までの唄子は隙あらば俺とイケメンを仲良くさせようとしていた。なのにこの何とも言い難い表情はいったい何なんだ。

「キョウちゃん…」

「ん?」

「できたら、あんまり八十島君には深入りしない方が…」

「はあ!?」

部屋着に着替え終えた俺は唄子の思わぬ発言に目を丸くさせる。唄子も唄子で俺の大声にビクッと身体を震わせた。

「お前言ってることコロコロ変えてんじゃねえよ! 訳わかんねえ!」

「だ、だってキョウちゃんがそんなに八十島君のこと気に入るとは思わなかったんだもん!」

頭を庇いながら俺に対してむちゃくちゃなことを言う唄子。相変わらず発言が意味不明な奴だ。

「八十島君はいい人だと思うわよ。でも、でもさぁ」

「なんだよっ」

「………いや、やっぱりいい! あたしが口出すことじゃないし、キョウちゃんの好きにして!」

「ちょ、そこで止めんなよ! 気になるだろ!」



その後も俺は唄子にしつこく尋ねたが、奴はいっさい口を割らなかった。けれどこの時、どうせ八十島より会長と仲良くして欲しい〜とかその程度の理由だろうと結論付けた俺は、それ以上詮索することをやめてしまった。


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あきゅろす。
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