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ストレンジ・デイズ



そこには案の定、二度と見たくはなかった夏川の姿があった。奴は憎たらしい顔をさらしながら、俺の横にためらいもなく座りやがった。

「座るな」

「ここ、生徒会専用座席。俺、生徒会長」

「俺の横に座るなって言ってんだよ!」

怒鳴り散らす俺を軽くあしらいながら、夏川は目の前でパンをほおばるトミー先輩にじとっとした視線を送った。

「ハルキお前、いつの間にコイツとランチタイムする仲に?」

「なひゅこほ、ひょうほひゃんはんほ…」

「何言ってんのかわかんねえよ。口に物入れたまましゃべるな」

トミーは口いっぱいに含んでいたパンを飲み込むと、夏川に優雅で上品な笑みを見せた。

「別にかまわないだろう? 僕と今日子ちゃんが友達になっても」

「友達ぃ?」

「そうだよ。ね、今日子ちゃん」

俺に笑顔で話をふってきた富里に、俺は同じくらいキラキラした笑顔で応えてやった。

「はい! トミー先輩とは、仲良くさせてもらってるんですぅ」

「ぶっ!」

突然口を押さえて吹き出す夏川。まあ、気持ちはわからなくもない。

「トミーって! しかも何そのぶりぶりした話し方!」

「夏、そんな人を小馬鹿にしたような態度やめなよ」

美味しそうなオムライスを口に運びながら叱咤してくる富里を見て、夏川は何ともいえない情けない表情を作った。

「おいおいハルキ…お前がこいつにバカにされてんだよ。気づけって」

「まさか、夏じゃあるまいし」

富里のツンとしたこの口調には、奴の腹黒部分が現れているのだろうか。それともただ夏川に嫌気がさしてるだけ?

俺が次から次へと富里の腹の中におさまっていくオムライスを見つめていると、唐突に夏川が腕を振り上げ大声をだした。

「美作ー! 早く来いって!」

「…美作?」

その名前には覚えがありすぎるほどある。俺が嬉々として夏川の視線を追うと、そこには案の定可愛らしい容姿をした親衛隊隊長、美作漢次郎が右手にカツ丼、左手にオムライスを持ちながらこちらに向かってきた。

「カツ丼で良かったですよね」

「おーご苦労さん」

にこにこ微笑む美作から意外に庶民的な食い物を受け取る夏川。
ま、まさかコイツ、漢次郎をパシリに使ってんのか!?

「……夏川さま、今日はご一緒してもよろしいでしょうか」

美作は俺の存在に気づくと、冷めきった視線をよこしながら夏川に尋ねた。

「お前がそんなこと言うの珍しいな。いいぜ、こいよ」

美作は一瞬だけ会長仕様の笑みを作ったが、すぐに可愛い口をひん曲げて俺と夏川の間にずずいと割り込んできた。美作にいきなり顔を近づけられ、俺の心拍数はなぜか跳ね上がった。

「お前、何を考えてる。夏川さまに近づくなって言っただろ。どうして一緒に昼食を…」

「僕が呼んだんだよ」

美作の声が聞こえたのか、トミーがチャーハンのご飯粒を口元にくっつけながら説明する。会長の可愛い親衛隊さんは、ぽかんと可愛らしい口を開けながら副会長を見つめた。

「今日子ちゃんは僕の友達なんだ。夏は関係ない。彼女、編入生だから今日は学校の説明を兼ねて一緒にランチしようと思って」

「あ…そう、ですか……」

学校の説明などというのは初耳だが、奴なりのフォローなのだろうか。だったら本当に説明してくれればいいのに、さっきからコイツずっと食べてるだけだ。
美作は再びガツガツと食いだした富里から目をそらし、眉間に皺を寄せて俺に小声で囁いた。

「お前が富里さま狙いなのは一向にかまわない。むしろ喜ばしいぐらいだよ。でもな小宮今日子、富里さまにも親衛隊がいる。親しくするつもりなら気をつけろ。お前は女だから、暴力は振るわれないと思うけど」

「お前…俺の心配してくれてんのか?」

「違う、警告してるんだ」

「なんだよ、照れんなよ!」

美作に思い切り抱きつく俺を見て、カツ丼を口にかき込みながら眉をひそめる夏川。そんな奴を尻目に俺は漢次郎のサラサラの髪を鷲掴みにして、むちゃくちゃにしてやった。


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あきゅろす。
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