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ストレンジ・デイズ



特に自分の名前を探すわけでもなく、ぼーっとしていた俺はすぐ後ろに別の集団があることに気がついた。雰囲気から察するに、1年じゃない。

「なぁ唄子、あっちの集まり何」

「え? …ああ、あれは2年生の順位表よ」

「2年もテストあったのか?」

「ええ、毎回長い休みの後にはね。もちろん成績には影響出てくる」

「ふーん」

特に興味はなかったが、俺はある1つの名前を見たくて2年の団体へ寄っていった。

「…げ」

あった。一瞬で見つかってしまった。第1位、富里ハルキの文字を。

「どしたのキョウちゃ…ああ、富里先輩ね」

「トミーの奴、ムカつくガリ勉野郎だ」

「そこがまたいいんじゃない! あ、富里先輩の隣見て見て。夏川先輩が2位よ。やっぱり素敵〜」

「カガワ先輩って誰」

「……もうキョウちゃん頭診てもらった方がいいじゃない」

トミーの隣にかかれた夏川夏の文字を見て、ようやく気づいた。このへんてこな名前、俺のファーストキスを奪おうとしたあのバ会長のだ。

正直あのセクハラ野郎が何位だろうがどうでも良かった俺は、騒ぐ唄子をスルーしてずらりと並ぶ順位表の名前を眺めていた。こんな風に全員分の結果を発表するなんて、かなりの労力を要するだろう。教師陣は時間の使い方を間違えてると思うが。

知らない名前が並ぶ中、ふと俺は覚えのある名を見つけた。俺としてはめずらしく顔まで思い出せるのに、本当にこれが俺の予想する男なのかがわからない。

「おい、唄子」

「会長は秀才ってのはもうセオリーなんだけど受けの前では時々馬鹿になるっていうね、そのギャップがまた……え、何?」

「この前俺につっかかってきた会長信者グループの親玉の名前って、美作だったよな」

「わっ、よく覚えてたねキョウちゃん! あってるわよ」

「……2年に美作って2人いる?」

「ううん、美作っていう名字は彼ただ1人。なんで?」

「………アイツの名前、美作漢次郎っていうのか…?」

そう、俺の視線の先には美作漢次郎という古風な名前が。あの女男、あんなナリして漢次郎!?

「そうなのよ! いやぁ、親もまた不適格な名前つけたわよね。似合ってないにもほどがあるわ」

「あの美少女顔で漢次郎…おもしろすぎる」

「ちょっとキョウちゃん、美作くん気にしてるから本人の前で触れちゃ駄目よ」

「からかってこよーっと!」

「あっ、こら!」

こんなネタのがしてたまるか! と俺は唄子の制止を無視して漢次郎の姿を探す。けれど残念なことに美作はここにはいないようだった。落胆しながらも諦めようとしたそのとき、俺の行く手を遮る影が現れた。

「お前、小宮今日子だな!」

「…あ?」

敵対心をむき出しにしながら俺を睨みつけているのは、背が低くひょろひょろした男4人。もちろん見覚えはない。

「僕らは夏川様親衛隊の幹部だ。隊を代表してお前に警告しにきた!」

「カガワ様…?」

「だから生徒会長のことだってば!」

ぽかんとする俺に唄子がイラついた様子で助け舟を出す。そうか、こいつらあのセクハラ会長の信者共か。

「隊長は手を出すなって言ったけど、やっぱ我慢できない! 夏川様を蹴るなんて頭いかれてるんじゃないの! ちょっと顔がいいからって、あんまり調子に乗ってると痛い目見るよ!」

「夏川様に色目使うなんて、百年早いっつうの! お前みたいな外部生の新参者が夏川様の何を知ってるというのさ! もうあの方に近づくな!」

一目もはばからずギャーギャー騒ぎ出した男達にげんなりした俺は、助けてくれという意味を込めて隣の唄子に視線を送る。だが奴はキラキラと瞳を輝かせてこちらを見ていただけだ。助ける気はまったくないらしい。

「つーかそんなことより、美作どこにいるか知らねぇ? お前らのリーダーなんだろ」

「そんなこと、だと!?」

「隊長を呼び捨てにするなんて、何様のつもり!?」

俺の発言にキレたらしい幹部の1人が、ギャラリーが大勢いる前で俺の胸ぐらを掴みあげる。しかし俺がそいつのひ弱そうな腕をねじ上げる前に、すぐ横から邪魔が入った。



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