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未完成の恋
そして、そのまま


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俺はそんな機械の声を聞きながら、ゆっくりとソファーに体を沈めた。あれからおよそ1ヶ月。あの女からの連絡はなかった。
ふと机に置いたままだった携帯電話に気づく。今日学校に持っていくのを忘れていたようだ。俺はそれをゆっくり手に取った。
外は薄暗くなっているのに部屋の電気をつけなかったせいで、携帯の画面がやけに目立って見えた。
唯一のメモリーにはあの女の番号。けれど、この番号からかかってくることはない。……だったらこれは、もう──。



そうだ、これは俺にとって意味のない物、必要じゃない物だ。

もう、いらない。



俺は握りしめた携帯を思い切り壁にぶつけた。バキッと激しい音をさせて壊れた携帯が虚しく床に転がる。
俺はなんだか胸が疼くのを感じた。


「っ…なんでだよ……」


静寂に包まれた部屋に響く俺の声。自分でも誰に対して言っているのかわからない。俺はそのまま膝を抱えてうずくまった。

こんな風に何かをどれだけ壊しても、気分が晴れることはない。それどころかいっそう憂鬱になっていく。そしてこの胸の疼き──。


いや、違う。
壊れたのは携帯だ。
俺が痛みを感じるはずがない。




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ああ、体が重い。
誰かに下から思い切り引っ張られてるみたいだ。
ここはどこだったっけ。そうだ、体育倉庫だ。
俺はここでなにをしてた? そう、俺はここで──。



「九ヶ島……」

反応がない。もう出ていったのだろうか。俺はおそるおそる目を開けた。案の定奴の姿は消えていて、俺は倉庫に1人横になっていた。

──今日も俺は気絶した。あんな屈辱と羞恥に堪えられなくて、自ら意識を手放した。それでも前とは違い俺は完璧に覚えていた。奴との情事を。俺が奴とした事を。

ざあっと雨の音だけが聞こえる。ずいぶん長いことここにいたようだ。どれくらいの間ここに1人でいたのだろう。


ああ、目が痛い。胸も腰も体中すべてが、痛くて痛くてたまらない。


「…ひなたっ………」


目がしみる。
俺はもう、限界だ。


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あきゅろす。
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