終わらせる(みんな) 凛々の明星ユーリ バクティオン神殿 + よくよく考えてみれば、満月の子が、ああやって野放しになっているのが不自然だったのだ。 薄暗い神殿を走りながら、ユーリは人知れず舌打ちした。 平和ボケしていたのだろうが、甘い考えを持っていた自分に反吐が出る。 (わかってただろ、人間が強大な力を利用しないわけがないって!!) やがてたどり着いた部屋、赤黒い結界に邪魔され、道が閉ざされていた。 魔導器の専門であるリタですらどうしようもない状況に、ユーリは唇を噛みしめた。 迷っている暇は、ない。 「下がってろ!」 仲間達に一喝し、ユーリは結界へと手をかざす。 次の瞬間、結界は跡形もなく消し飛んでいた。 「行くぞ!!」 「ユーリ、あんた・・・」 「説明はあとだ!!」 リタの言葉を流しつつ、ユーリはひたすらに走った。 頭の中の警報が鳴り止まない。 もし、あの人間が良からぬことを考え、それを実行してしまったら。 世界は 「遅かったな」 冷たく響く声、その手に握られた聖核。 ぐったりとするエステルに、ユーリは自分の嫌な予感が当たっていたことを悟る。 「ろくでもねえな・・・いつの時代も、人間は」 「くくくっ・・・!君がそれを言うかね、『凛々の明星』!」 「・・・・・・」 仲間達が息を呑むのがわかった。 この世界に古くから伝わる伝承、空へと登った兄の話。 まさか、満月の子だけではなく、凛々の明星まで存在するとは思ってなかっただろう。 だが、自分は今、ここにいる。 「わかってるさ、‘俺達’は、何度も同じ間違いを繰り返してきた」 おもむろに、ユーリが片手を上げた。 その手が光ったかと思うと、エステルを捕らえていた術式が弾け飛んだ。 「なっ!?」 「だからこそ、もう、お前の好きにさせない」 もしかしたら、と傍観を決め込んでいた。 でも、人間はやはり、どこまでも愚かで、どこまでも愛しい存在だった。 「今度こそ、終わらせる」 また、人が道を踏み間違えたのなら、正せばいい。 そのために、‘凛々の明星’は存在しているのだから。 +++ 知識を受け継いでいるバージョンの凛々の明星ユーリ このユーリは地味に最強です(笑) [*前へ][次へ#] |