ちゃんと、いるよ(レイユリ) ユーリがちょっと弱いです + いつも魔物と戦っているとはいえ、日々の鍛錬は必要だ。 旅を始めた頃は一人でそれをしていたユーリだが、レイヴンが仲間になってからは、度々、訓練の相手になってもらっていた。 普段は弓と小刀しか使わないのに、レイヴンは何故か剣の扱いに秀でていて、ユーリとしては、彼との鍛錬は願ってもないもの。 暇さえあれば、だらけるレイヴンを連れ出して手合いをしていたものだ。 その日も、疲れただなんだとボヤくレイヴンを引きずり、ユーリは剣を握った。 いつもいつも、密かに楽しみにしていたこと。 だが、レイヴンに剣を向けようとした時、それはガラリと違うものになった。 寒いわけでもないのに、身体がカタカタと震えた。 剣を握る手に力が入らなくなって、カシャンと、金属が落ちる音がした。 「青年?」 レイヴンの声すら、何故か遠く。 剣を拾おうとするのに、何度も取り落としては、それがたてる音に身体をビクつかせた。 「わ、わりぃ・・・」 かろうじて絞り出した声は、みっともなく震えていた。 「ちょっと、本当にどうしたのよ?」 さすがのレイヴンも、少し焦りながらユーリに近づく。 暗くなりはじめた世界。 逆光でよく見えない、レイヴンの顔。 気がつけば、ユーリは自分を抱きしめるようにしてうずくまっていた。 意味をなさない、言葉にすらならないような声が、唇からこぼれて。 剣を取り落とした手には、あの時感じた硬い感触。 「青年・・・ユーリ!!」 「っ!!」 強く名前を呼ばれて、ようやくユーリは我にかえった。 少し視線を上に向ければ、心配そうなレイヴンの顔。 −−−ああ、よかった。 「殺して、ないよな・・・俺・・・」 「ユーリ・・・?」 「ここにいるよな・・・?」 まるで、子供のような問いかけだった。 見たこともない弱々しい表情は、今にも泣き出してしまいそう。 (そうか・・・彼は・・・) レイヴンの脳裏に蘇ったのは、もう一人の自分。 騎士として、アレクセイに仕えていた、シュヴァーン・オルトレインという人物。 『自分』が、ユーリを傷つけたのだ。きっと。 「ユーリ、おっさん、ちゃんと生きてるわよ」 「・・・うん」 「ね?大丈夫だから」 この青年だって、一人の人間なのだ。 悩みもするし、傷つきもする。 普段、見ている強い姿に、つい忘れてしまうけれど。 「ちゃんと、そばにいるよ」 いまだ震える、細い手を握って、レイヴンは微笑んだ。 どうか、自分がつけてしまった傷が、少しでも癒えるようにと。 +++ シュヴァーンのことがトラウマになっているユーリが書きたかったのですが・・・ これじゃ、別人ですね [*前へ][次へ#] |