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幻想詩編
絶望運河


私は君を忘れない



黒曜の河が崩れ往く

無間の亀裂に船喰われ

硝子の悲鳴が鼓膜を裂いて

無言の『黒』に満たされる


思い出したんだ、咎を


原始の意識を感じながら

身を裂かれながら泳ぐ

暗闇に溺れながら

硝子の河を砕き進む



思い出したんだ、君の事を



血潮は凍り

四肢は砕け、硝子に喰われる

光は奪われた事にも気づかず

虚ろの穴が何処ぞ見つめる



忘れようとした、楽園を



苦悶の中に足が止まり

腹は裂け、黒い中身が硝子に溶ける

嘘に爛れた喉は崩れ

耳障りな命乞い




失いたく無かった、楽園を




硝子の擦れる風の音

硝子の割れる波の音

黒曜の河は歪に渦巻いて

頬引き裂いてゆく



気づいたら、跡形も無かった



まだらに赤い硝子の風は

砕けた黒に刺さって鳴いた

黒曜の悲鳴は

まるで産声のようだった




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