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ElysionB
「あ、エルちゃんだ!」
「お、エル。今日はお父様たちは一緒じゃないのか?」
「ハンナおねーしゃんにゼネしゃん!こんにちはっ!」

ロストール広場にて。
元気良く駆けるエリュシオンに声を掛けたのはハンナとゼネテス。仲良く手を繋ぐ二人の姿は、さながら歳の離れた兄妹といった所か。

「あのね、エルね、おたんじょうびぱーてぃのおはなをつみにいくの!」
「誕生パーティ?そっか、そろそろレムオンの誕生日だったな」
「エルちゃん、一人でお使い偉いね!」
「ありがとうハンナおねーしゃん!おねーしゃんは、ゼネしゃんとでーとなの?」
「おいおいエル、これはデートじゃな「うん!だって、あたしたち婚約者だもん!」
「へぇ〜。ゼネしゃんとハンナおねーしゃんは、らぶらぶなんだね!」
「え、エル……」

参ったなぁ……と頭を掻くゼネテスに、二人の子供は可愛らしい声を上げて笑う。

「エルちゃんのお父様とお母様みたいな、らぶらぶ夫婦を目指すのよ!ね、ゼネテス?」
「イリアとレムオンみたいな?レベルが高すぎるぜ、ハンナ……」
「がんばってねゼネしゃん!おねーしゃんをしあわせにしてあげてね!」
「は、ははは……」

お子様二人を相手にタジタジなゼネテス。そんな三人の様子を見守っていた通行人達が、微笑ましい笑顔を投げかけていた。
ロストールは今日も平和である。

「それじゃ、エルもういくね!いそいでおつかいすませないと!」
「ああ。お使い頑張れよ、エル」
「またね、エルちゃん!」

ハンナとゼネテスに見送られ、とことこと駆け出すエリュシオン。
大きな花籠を手にえっちらおっちら……どことなく危なっかしい印象が拭い去れない。





「……で、お前さんたちはこんな所で何をやってるんだ?」
「む、見つかってしまったゴブか。流石は歴戦の名将ゴブ」

草むらに隠れていたゴブゴブ団をあっさり見つけ出したゼネテス。
横からハンナが「不審人物、ストーカーだわ〜!」とか何とか喚いていたが、ゴブゴブ団は聞かなかった事にした。

「邪魔しないで欲しいゴブ。我々はあの子の護衛依頼を受けているゴブ」
「護衛依頼……ははぁ、どうせレムオンに頼まれたんだろ」
「違うゴブ。イリアが依頼人ゴブよ」
「あの人はそんな回りくどい事しないと思うゴブ」
「……確かに、レムオンなら自ら護衛に乗り出しそうだもんな……」

リューガ家当主様の親馬鹿っぷりを良く知っているだけに、なかなか的を得た予想である。

「何だか面白そうだな。俺もいっちょ混ぜてくれよ」
「だ、駄目ゴブ!これは我々の受けた依頼ゴブ!横取りなんてさせないゴブよ!」
「別に横取りなんてしないって。最近ロストールも平和で、俺も少し暇なんだよ」

平和に越したことはないんだがね、と小さく付け加える。

「ええーっ!ゼネテス、あたしとのデートはどうするのよ!」
「む。お前、こんな小さな子とデートの最中だったゴブか?」
「そうよ!あたしたちは婚約者なんだから!邪魔しないでよっ!」
「は、ハンナ……」
「お前達、許婚だったゴブか!」
「これはさすがに犯罪だと思うゴブ……」
「うるさいわねー!いいわ、こうなったらあたしもついていくんだから!」

新たに護衛メンバーを二名加えたゴブゴブ団だが。
その背中には少しばかり哀愁が漂っているように見えなくも無かった……。



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