[携帯モード] [URL送信]
Elysion@
来たる主人の誕生日を目前に、使用人の皆は揃って浮き足立っていた。
屋敷全体が慌しい雰囲気に包まれる中、三歳になったばかりの娘エリュシオンも準備に忙しい日々を送っていた。
もうすぐエリュシオンの父親の誕生日。プレゼントの用意だって、一ヶ月も前から始めている。
そう、全ては大好きな父親の、喜ぶ顔を見るために……





「おかーしゃまおかーしゃま!ねえねえ、エルにもなにかてつだえることはない?」

愛しい娘の呼びかける声に、準備に忙しく走り回っていたイリアは足を止めた。

「あら、エル。あなたはもう、準備は出来たの?」
「うん!もうじゅんびばんたんだよ!」
「そうねぇ……それならエルにも、お手伝いしてもらいましょうか」
「わぁい!なんでもおてつだいするよ!」
「ふふっ、エルは本当にいい子ね」

愛らしい笑顔の娘の頭を優しく撫ぜる。
大好きな母親に褒められて、エリュシオンが更に嬉しそうに微笑んだ。

「それじゃあ、エルにはお使いに行ってもらおうかしらね」
「おつかい?」
「そう。お母さん忙しくて手が離せないから、代わりにエルに行ってきてほしいの」
「うん!エル、おつかいがんばるよ!」
「ありがとね、エル。簡単な用事だから、あなた一人でもきっと出来るわ」

エリュシオンに託されたお使い。それは誕生日パーティに飾る、花の調達であった。
ロストール市街を抜けた先にある花畑。そこに咲く花を沢山摘んでくるのが、エリュシオンのお使いの内容だった。
初めてのお使い。エリュシオンの胸が期待に高鳴る。
大好きな母の期待に応えたいと、使命感が湧き上がってくる。

「一人で大丈夫よね?ちゃんと行けるわね?」
「うん!エル、ひとりでもこわくないよ!」
「じゃあ、あなたに任せるわね。寄り道はしちゃ駄目よ?」
「は〜い!それじゃあ、いってきま〜す!」

大きな花籠を手に、元気良く屋敷を出発したエリュシオン。
大好きな父のお祝いの為に、綺麗な花を沢山摘んでくるのだ。
目的地へと向かう足取りは自然とスキップになる。
今日はいいお天気、絶好のお使い日和だ。
初めてのお使い。大好きなお父様とお母様の為、頑張らなくては!



[次へ#]

1/9ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!