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終幕世界のインテルメッツォ
(イザヤ+イヴ)








すぐ目の前で、被験者の日毎のデータを語るイザヤの横顔をイヴはじっと眺めていた。


後方にあるカプセル群には、残すところあと一人の被験者がコードに繋がれて漂っている。


始祖ユダ。


気の遠くなる程の人間を選別した。
山ほどの怨嗟を聞いた。
だが、そんな事はどうでもいい。
全ての始祖は揃ったのだ。
後は最後の始祖の覚醒をただ待つのみである。


女神を取り戻し、人類が君臨するこの地上を私達のもとに取り戻す。
イザヤの本懐はもう目の前だ。


故に最近の彼はかなり神経質になっている。
データを語るその横顔は傍目にも分かる程疲弊し、睡眠をしっかり取れていないのも顕著だ。


いくら始祖と言えども疲れがたまっていれば動きは鈍るし、病にも罹り、日常生活にも支障は出る。
人類のモデルとなる始祖は、悲しいかなその構造が今の人類と大差ないのだ。



「イザヤ」



イヴの呼び掛けに、淀みなくデータ結果を述べていたイザヤの瞳が向けられた。



「少し休みなさいな」

「……………はいっ?」



イザヤの表情が歪む。
常の人当りの良い彼からは想像もつかないような表情だ。
どうやら余程疲れて苛々しているらしい、その妙に人間臭い表情にイヴは笑った。
イザヤに言ったらひどく嫌悪するだろうが。



「休みなさい。あなた、酷い顔していてよ」

「…イヴ、お言葉ですが……」

「休む暇がないなんて事はないわ。あなたが焦ったところで始祖ユダの覚醒が早まるなんて事もないし、もし今あなたに倒れられでもしたら面倒なの」

「………」



イザヤは押し黙ったが、その表情は納得出来ていないものだった。



「休むのも大義のためには必要だわ。そうではなくて?」

「………」

「イザヤ」

「……分かりました」



不承不承といった様子ながらも、イザヤは機械から離れるとその場に座り込んだ。



「30分経ったら起こして下さい」

「まぁ。そんなところで寝るの?」

「自室に戻るまで他の異端審問官に捕まる可能性がある。私はあくまで今は“市内巡回中”なのです」

「…もうっ、仕方のない事。だったら──」



イザヤの傍に寄ったイヴはぐいっと彼の頭を引き寄せると、自分の膝の上にぽすんとイザヤを寝かせるようにした。
一瞬、イザヤは状況を理解出来ていないかのように目をぱちくりとさせ、それから──



「…………はっ?」



彼にしては珍しい程、間の抜けた声を漏らした。



「ふふっ。固い床よりは全然ましでしょう?」

「……っイヴ、私はあなたの悪ふざけに付き合う気は──」

「ほらほら。30分あっという間に経ってしまうわよ」



あやすように前髪を梳いてくる細い指の心地良さに、イザヤの反論は消えてしまった。
それでも憮然とした表情を浮かべ、イザヤは目元を隠すように腕を置いた。



「……全く。こういうのはシンにやるべきでしょう」

「シンが素直にやらせてくれるとでも?」

「失礼。無理な話だったようです」

「四の五を言ってないで、ほら、休みなさいな」



尚も前髪を梳いてくるイヴに、イザヤはとうとう諦めた。



「…仕方ありませんね。今回だけ、お言葉に甘えさせて頂きますよ」



その言葉を最後に、イザヤはあっという間に眠りの淵へと落ちていったようだった。やはり余程疲れていたのだろう。
規則正しい寝息を漏らすその姿にイヴは微笑み、そっと彼の頭を撫でた。





「お休みなさい。イザヤ」


















幕世界のインテルメッツォ





イザヤとイヴで何か書きたくて生まれたブツ。

勿論イヴに特別な感情なんて無いし、イザヤも何か感じるわけではないけど、二人共教団内で素性隠して生活していて、始祖の事や「民族浄化」の本当の目的も知っている間柄なわけなので、他の始祖に比べて少しは気を許している部分があるという設定。

しかしそれでも互いに微塵も興味がないのがこいつら。




あきゅろす。
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