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付言


「またお会いしましたね」






聞き覚えのあるその声に寒気立つ。

いつものように屋上で放課後まで暇を潰していようと思った私の目の前にいるのはいつぞやかに出会った六道骸と名乗った男。

何故並中にいるのかということよりも、堂々と屋上に入る唯一の扉から来たことに驚いた。

気配を全く感じなかったからだ。






「学生が勉学に励む時間にこんなところで貴女は何してるんですか?」


「その言葉、そっくりそのまま返す」


「よく雲雀恭弥が許しましたね」


「その口ぶりだと知ってるようだな」






赤と青の目を見て言えば鋭い方だ、と笑った。

扉の前に立っていた六道骸が1歩近づいて来たので私も向き合うようにして立ち上がる。






「貴女の言う通り、僕はここで起きていることをすべて知っています。それが教室に行かない理由、というところでしょうか」


「ならば何故ここへ来た」


「随分面白いことをしているので少し参加してみようと思いまして」


「お前も委員長と同じ類の者か」






厄介な人物がまた一人増えてしまったなと小さく溜め息を吐く。

この男も委員長と同じく出来れば関わってほしくない。

いちいち相手にしてたら命がいくつあっても足りないだろう。

だからと言って私の方につけとか、そういう華甍有莉乃的思考は持ち合わせていないのでその辺は適当にやってほしい。

ただ本当に、極力私にかまわないでほしいだけなんだ。






「雲雀恭弥なんかと同じにしないでほしいですね。彼は僕に負けたんですから」


「…委員長が?」


「ええ」






心底嫌そうな顔をする六道骸に知り合いでも仲が良いわけではないのかと察する。

それにしてもあの委員長を負かす程の奴だったとは……尚更関わりたくなかった。






「それで、私は委員長のいる場所まで案内すればいいのか?」


「そんなことして誰の利益になるんです?貴女も巻き込まれますよ」


「ならやめよう。委員長に押し付けて一人になろうと思ったのに残念だ」






早くここから立ち去ってくれないだろうかと思いながら六道骸に背を向け会話を終了させた。

フェンスに肘をつき、どこを見るでもなく視線を泳がせている私は一方的に六道骸の存在を無視し続ける。

相手も同じように何も言って来ない。

だがまだ後ろにいるということはわかる。

何故わかるかと言えば気配を感じ取れなかったさっきとは違い、すごく不快な視線を背中に受けてると自分でわかってるからだ。






「まだ私に用事でも?」


「たいしたことではありませんが、貴女がボンゴレと知り合いだというのを思い出しましてね」


「ボンゴレ…ツナとも知り合いなのか、六道骸」


「骸でいいですよ。彼はただ僕の器になるだけの男。契約さえ出来ればいいだけです。
貴女と契約しておくのもいいですね」






どうです?と誘う六道骸の"契約"の意味がわからない私は身の危険を感じ結構だ、と断った。

残念だと口にする六道骸はクフフと独特な笑い声を零す。






「これからの貴女の行動が楽しみだ。今日はこれで失礼させてもらいます。
そうそう、一人になるのは控えた方が良さそうですよ」






それでは、と不吉な言葉を残して消えた六道骸のいた場所を見つめる。

やっぱり私はあの男が苦手だ。






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