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Coppelia! (111番、詩燗様へ)
くだらない。

くだらないくだらないくだらない。


その想いは、熱い雫となって、私を酔わせる。





ほとり、硝子壜に涙が落ちる。
ほとり、ほとり、幾つもの涙が、積もり、重なり、混ざり合う。


さあ すべて貴方の為の涙
心ゆくまでお召しあそばせ


ほとり、と最後の涙が落ちて、私はそっと蓋をする。
貴方が為に。私の心を。
そう、それはまるで、甘くて苦い果実のような。

噫、なんて愚かな私!
”悪魔”と呼ばれる彼ですら、時の流れに打ち勝つことなんて出来ないのに。


"永遠"だなんて 子供騙しも甚だしい


鏡台に置かれた五つの小壜。
貴方を想って流した涙は、いつでも澄み渡っていて。
黒天鵞絨を上げて鏡に映る姿は、幾年前からまったく変わらぬ、在りし日の少女の微笑。


何故かしら
こんなにも貴方に惹かれ
こんなにも貴方を恋うる


もう、どうしたらいいかわからない。
数百年に渡って蓄えたはずの智恵は、こんなにも役に立たなくて。

所詮、私はこんな人形だから。


見て、私はこんなにも貴方を想っているの
凄いでしょう?
今まで、これほどまでに愛された経験がお有り?
ないでしょう。
私が一番、貴方を愛している
私は、貴方の為にこれだけの涙を流したのだから


ふと、邪念が頭を過ぎる。
本当ニ、ソノ涙ハ彼ノ為?


『哀れで可哀相な私の為に』



そして、私は朽ち果てる。




埃を被り、蜘蛛の巣の張った部屋。
古い鏡台。曇った天窓。朽ちた床板。鼠の這う天井。
窓辺には、とうの昔に壊れ去った仏蘭西人形と、透明な液体の入った五つの小壜。



誰も、見つけることの出来ない部屋に。
小さな恋が、生まれて消えた。


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あきゅろす。
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