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二次小説(うたプリ)
わたしと、いれかわりじけん。



 レンたちが学校に来てから、一層学園生活が賑やかになった。だからか、あっという間に日々は過ぎていき、いつの間にか学園祭前日となった。

 しかし、何事も順風満帆に行くわけではないらしく。

「……で、つまり、私たちの中身が入れ替わってしまった、ということですか」

 学園祭前日の朝、いつも通りトキヤが起きると、何故か自分はレンの体になってしまっていた。見た目はレン、だが中身はトキヤという状態になったのだ。
 慌てて部屋を出ると、どうやら他の部屋の住人たちにも同じ現象が起こっていたらしかった。
 パニックになっている皆を一喝したトキヤは、とりあえずラウンジに集まろうと提案し、現在に至る。

「七海と渋谷が外出中で良かったねー。特に七海に体乗っ取られたら何をされるか……」

 春歌と友千香はバカンスでフランスへ行っているため、今はいなかった。確かに、彼女らがいないことが不幸中の幸いだろう。
 はぁーとため息をつく『真斗』にその場すべての視線が集まる。

「……………」

「? どうしたの皆」

 『真斗』がきょとんと首を傾げる。

「「「なんか真斗がめっちゃかわい、」」」

「凍らすぞ」

「「「なんでもないです」」」

 『翔』に絶対零度の視線で射抜かれた者たちはすぐに口を閉じる。
 そんなやり取りを見て、トキヤは再びため息をついた。

「しかし、真斗さんの中に音也、音也の中に翔、翔の中に真斗さん、レンの中に私、私の中にレンとは……なんというか」

「シュールだな」

「俺を見て言うな砂月」

 音也の姿である翔と何も変化がない砂月を見て、真斗の姿である音也が首を傾げた。

「なんで砂月たちには影響ないの?」

「一応影響はありますよ。僕、今さっちゃんの体なので」

 つまり、双子は双子同士で入れ代わってしまったということか。

「……それは、多分誰も気づかないですね」

「翔ちゃんは気づくと思いますけどね」

「原因は何なんだい? こういうのに詳しいのはシノミーたちだよね」

 トキヤの姿をしたレンにそう問われ、那月と砂月は言葉に詰まった。

「さあ……わからないです」

「意図的なものであることは確定なんだがな」

「意図的……」

 シリアスな雰囲気のところ悪いが、トキヤにはどう考えても悪戯にしか思えない。
 中身が入れ代わっても何か起きるわけでもない。なのにこんなことをする、意味がわからない。

「犯人は誰だ。俺がすぐに氷漬けにしてやる……」

 黒いオーラが真斗の背後に見える。それを見た音也はお化けを見るような目で真斗を見た。

「翔の声とマサの口調が似合わない……てか怖い。怖いよマサ」

「え、これはこれでカッコいいじゃん。さっすが俺様! 何でも似合うな!」

 自信満々に威張る翔を不憫に思ったのはトキヤだけではないはずだ。

「翔はいつもはもっと、かなり可愛いんだよ?」

「可愛い言うな!」

「でも、一番違和感ないのは翔ちゃんですね」

「そうか?」

「はい。可愛いですよ、翔ちゃん。ぎゅ〜」

「抱きつくな。てか、結局可愛いに持っていくのかよ……」

 那月に抱きつかれていつも通りぐったりとしている翔が、諦めるようにそう呟いた。

「それにしても、よりによって学園祭前日にこうなるとは……もうシフトを替えることすらできないだろうな」

 真斗の言葉にトキヤははっとなる。そうだ。明日は学園祭だった。
 つまり、もし今日で元に戻らない場合、この姿で学園祭に参加することとなる。
 音也も何か思い出したようで、「あっ」と声を上げた。

「そうだ! 俺たち劇があるじゃん! 俺を那月と砂月が取り合うっていうギャグ路線の劇が!」

 その言葉に、翔が額に手を当ててため息をつく。

「あー……すっかり忘れてた。俺とか、なんか“アラジンと魔法のランプ”に出てきそうな踊り子の格好させられるんだぜ」

「翔はまだいいじゃないですか。……私なんか、私なんか、ナース服ですよ!」

「俺もおチビとイッチーのとばっちり食らって警官服着るはめになるし。しかもミニスカ」

「チビ言うな! 羞恥心は同じだろ。むしろ俺の方が露出度高いわ! 腰は布巻くだけだわヘソだしだわ挙げ句の果てにはウィッグつけられて上目遣いの特訓させられるわ!(女子に)」

「俺もミニスカだから生足だし、手錠持たせられてM男子たちを罵れとか言われたんだぜ? 俺SMプレイとかさせられるんだぜ?(レディたちに)」

「私だって! ほとんど足は出ててニーソックスは履いてはいけないと言われるし、ヒール履けって言われてヒール履くはめになるし、どこかのオタ向けみたいな台詞言わされるし!(女子に) 散々ですよ! 女装に慣れている貴方たちとは違うんです!」

「人聞きが悪いな。女装趣味なのはおチビだけだから」

「好きで慣れたんじゃねえよ那月と砂月のせいだよ俺の趣味じゃねえから!」

「……見た目だと、音也とレンとトキヤだからか、この会話にすごく違和感を感じる」

 端から三人の会話を聞き、冷静にそう言った音也に、真斗が頷く。

「同感だ。それに、一十木は来栖のように短気で怒ることはないからな。新鮮だ。表情が」

「おい俺、じゃなくて真斗。今何気なく貶したよな俺を」

「気のせいだ」

「……とにかく、まあどうしてこうなったかはわかりませんが、明日になっても戻らなかった場合は、この姿のままの組み合わせで見回りしましょう」

 そうトキヤが言うと、何故かレンと翔の表情が固くなった。何かまずいことでもあったのだろうか。

「どうしました、レン、翔」

「い、いや? 何でもないよ」

「ああ、何でも、ないぜ」

 何かあるな。
 トキヤはそう悟った。
 二人の咄嗟の嘘を見抜けないほど、トキヤは馬鹿ではない。
 そして、その嘘をわざわざ指摘するほど子供でもなかった。

「とりあえず、多少の不自由はあると思いますが、元に戻るまではその体の持ち主を演じるようにしましょう。普通の人間には、この現象を説明しても理解はされないでしょうから」

「ええーっ!!? 無理無理、俺無理! だってマサ、先生じゃん! 俺、授業中は常に寝てるか落書きしてるのに、先生やれとか言われても無理だから! マサとは性格も全然違うしー」

「俺も、来栖を演じるのは難しいと思う。日々の学業は問題ないだろうが、問題は友人たちとの会話と接し方だ」

「お、俺だって音也みたいに――――」

「……皆さん、レンを演じることとなった私より大変なんですか?」

「「「すみませんでした。真面目に演じます」」」

 トキヤの淡々としたその声と言葉に、三人は声を揃えて謝った。
 それを見てレンが不満そうに呟く。

「……皆、本当に俺に冷たいよね」

「気のせいだ」

「一番冷たい人に言われても説得力ないんだけど」

 真斗とレンの間に火花が散る。普段見慣れたその光景も、今は見た目は翔とトキヤなので、やはり不自然に見えた。

「とりあえず、皆さん、ちゃんとその体の持ち主を演じてください。特にレンは私のイメージを壊さないように。では、もうそろそろ準備しないと遅刻してしまいそうなので、解散ということで」

 トキヤの言葉で、その場は解散となった。


 ☆☆☆


「……まさかこうなるとはねぇ。びっくりだ」

 見た目がトキヤ、音也であるレン、翔は、登校時二人きりになった。ちなみに他の皆も、外見に合わせた組み合わせで登校している。
 二人は歩きで登校しながら、どうするかを話していた。

「びっくりどころか最悪だろ、お前にとっては。もしあの未来が当たったら、お前の大事なトキヤと真斗が死ぬはめになるんだぞ?」

「……容赦ないね、おチビちゃん」

「曖昧なのは嫌いだからな」

「まあ、仕方ないじゃないか、組み合わせは。おチビちゃんは満足だろ? シノミーたちと一緒にいれることができて」

「お前は音也とか。……ちょっかいかけるなよ。いい加減理解しろ。前世と今のアイツは違うんだ。別人なんだ」

 忠告のように言われたその言葉に、レンは苦笑する。

「……だって、見た目は―――今は違うけど―――同じだろ? そりゃ、少しぐらい意地悪したくなるさ」

「子どもかよ」

「初恋しかしてないもん」

「もん、って……」

 呆れる翔に、レンは逆に問いかける。

「じゃあ、おチビはシノミーたちに彼女か彼氏ができて、ちょっかいをかけないと断言できる?」

「それ、は……」

 言葉に詰まり、翔は俯いた。レンは、髪をかき混ぜて溜息をつく。

「……ごめん、意地悪しすぎた。はあ、俺のもう大学生だっていうのに、大人気なくてごめんね」

「気にしてない。牛乳奢れ」

「ちゃっかり要求? 立ち直り早くない? さっきのもしかして演技?」

「どうだろうな?」

「……ま、俺はどんなことがあっても、二人を、守る」

 固い意志を告げるレンをじっと見て、翔は恐る恐るというように口を開いた。

「なあ、一つ聞きたかったことがあんだけど」

「何?」

「“今”のお前は、真斗とトキヤ、どっちかならどっちを選ぶ?」

 その質問にレンは目を見開いて、しばらく沈黙した後、ポツリとその答えを呟いた。


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あきゅろす。
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