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 嗚呼、落ち着かない。

 待ち合わせ場所へ向かう神楽はそう思っていた。何せアイツと二人で出掛けるなんて初めてのこと。別に付き合っている訳では無いが、何故か、昨日の晩から落ち着かず、そんなに睡眠が取れなかった。其れがどうしてなんて、あまり考えたくないのだけれど。

ドキ、ドキ

 待ち合わせの四十五分前、待ち合わせ場所まで、あと数百メートル…。

 そもそも何故、二人が出掛けることになったのかというと、きっかけはアイツだった。栗色の髪をした、生意気でいつも喧嘩を吹っかけてくる、アイツ。沖田総悟、だった。

「…おいチャイナァ」
「何アルか。」
「日曜日ひまですかィ?」

 は?、と反射的に言い返してしまえば、何やらチケットのようなものをひらひらと見せられた。

「入園者全員に酢昆布プレゼントってやつでさァ。」

 遊園地のチケットに、確かにお一人様一箱と書いてあった。其れに神楽が食いつかない筈もなく。

「行くアル!ごっさ行きたいネ!」
「じゃあ日曜な。」

 お前も行くアルか!?、とでも言ってやりたかったが、チケットをもらう分際で其れは無いだろう、と思い、その言葉は飲み込んだ。

 そんなこんなで、二人は遊園地に出掛ける事になったのだ。別に、デートとか思っても無いし(ちょっとは思ってもみたけれど)緊張している訳でも無いのだけれど。何か、落ち着かない。いつもより、身支度に時間がかかってしまったのも、可愛い服を着ていこうと思ってしまったのも、多分落ち着かないからで。

 待ち合わせ時間までまだ時間があるというのに、早めに家を出た。慣れない低めのヒールを履いて、コツコツと歩んで行けば、辺りは待ち合わせのカップルばかり。

「…慣れないネ。」

 と一人呟いて、待ち合わせ場所まであと数メートル。遊園地前の噴水で、二人は落ち合った。







待ち合わせの30分前
(お前、何でもういるアルか!?)
(お前こそまだ30分前ですぜィ?)



*恐れ多くも桃色受け祭に出品させていただきました。ありがとうございます!




あきゅろす。
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