鍛錬


心配していた暑さがぶり返すこともなく、季節は完全に秋へと移行したようだ。
その代わり、秋の長雨という言葉通り、この三日三晩雨が降り続いていた。

その間、半兵衛は読書をしたり天音に様々な事柄について質問したり、のんびりDVDを鑑賞したりして過ごしていた。
体調も随分良くなってきている。

そうしてようやく訪れた晴れの日に、彼は少し身体を動かしてみたいのだがと申し出た。
出来れば剣を用いた鍛錬がしたいらしい。

「良蔵先生も運動は必要だと言っていただろう?」

「はい。それで、鍛錬なんですね」

「ああ。鍛錬をしないと鈍ってしまうからね。あまり長い間刀を持たずにいると筋力も落ちる」

それならと天音は半兵衛を敷地の内側に位置する庭に案内した。
全面芝生でちょっとしたミニ運動会が出来るくらいの広さはある。
真剣を用いた鍛錬に一体どれくらいのスペースが必要なものであるのか想像もつかなかったが、イメージとして剣道場の稽古風景が浮かんだので、やはりここでは少し狭いかもしれない。

「狭くて申し訳ないですけど…」

「いや、充分だよ」

良い庭だねと微笑んだ半兵衛は、感触を確かめるように剣の柄を握り、すらりとそれを引き抜いた。
刃が晒されたそれを見るのは二度目である。

「危ないから君は離れていたまえ」

「はい。じゃあ、暫くしたらタオルとお茶を持ってきます」

もとより邪魔をするつもりはなかった。
見られていては気が散るだろう。
天音はその間に他の用事を済ませてしまうことにした。






あきゅろす。
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